短いとウエストを一周しない。

「あなたが規格外なの。ダイエットしましょう」


長いと扱いにくい。

「あなたが破滅的に不器用なだけです」


柄がつまらない。

「つまらないあなたには、それで充分です」


柄が派手過ぎる。

「添え物の癖に出しゃばるあなたと同じ」


着物以外に使い途がない。

「画期的な用途が思い浮かばないあなたよりマシ」


帯と紐の区別が付かない。

「大丈夫。どちらもあなたよりは役に立ちますから」


さっきから俺に口汚く言い返してるのはあんたか?

「いいえ、わたしは『あんた』ではなく、ただの帯ですよ」


ただの帯が生意気な口を利くな!

「わたしの本業は人を縛ることです」


な、なにをする!

「役立たずのあなたを縛っておけば、きっとみなさんに感謝されるでしょう」



【おしまい】

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る