多数決

「多数決ってさ、何気に残酷だと思わない?」

「どして?」

「だって、それが僅差だとしても、少数派の意見は抹殺されちゃうんだぜ?」

「まあなあ。でも、それ以上に民主的な意思決定の方法がねえんだからしょうがないよ」

「あっさり言うよなあ。自分がマイノリティの立場だったらどうすんだよ」

「そらあ、決まってるがな」

「ほう?」

「どうすんの?」

「多数派に乗り換えるんだよ」

「よわ」

「言ってろ。自分が権利を享受するなら、そっちの立場にいねえとどうにもならんだろが?」

「そりゃそうだけどさ」

「だろ? 結局おまいらだって、こっち側にいるじゃんかよ」

「いたた……それを言われるとヨワいなあ」

「だよねー」

「へっへっへ。俺たちゃ、こいでがっぽしゲットできる側ってことさ」

「ううむ」

「なんか、こんなんでいいのかなーとは思うけど」

「でも、突っ張り続けるのはしんどいもんねー」

「そうそう」

「ってことでよ。おまいらも無駄な抵抗してないで、俺たちの側に来たらどうだ? どうせ世の中多数決なんだからよ」

「……」

「……」

「ほら、どうした?」

「いや、ボクたち、別に意地になってるわけじゃないんですよ」

「あん?」

「そもそも……」


 なんの多数決なんすか?



【おしまい】

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