闇鍋

 たかしくんは、おともだちをさそっておうちでぱーてーをすることにしました。


 たかしくんは、おともだちにしょうたいじょうをかきました。


『うちでぱーてーします。なにかもってきてね』


 しょうたいじょうをもらったおともだちは、なんじゃこりゃとおもったけど、いろんなものをもっていきました。


 たかしくんは、なべぱをするつもりで、おおきなおなべにおゆをたっぷりわかして、まってました。


 おともだちがきたら、たかしくんはこういいました。


「そこにいれてって」


 おともだちは、なにもかんがえずに、もってきたものをぽんぽんおなべのなかにほうりこんでいきます。


 ぐつぐつ。


 おともだちがぜんいんそろったら、たかしくんは、おおきななべをみんなのまえにどんとだしました。


「これからなべぱだぜ!」


 みんなは、めがてんになりました。




『汚れた靴下』

 え? 知らんの? 酪酸っていうくさあい匂いの成分が旨味を増幅するんだぜ? くさやだって、臭豆腐だってそうやん。三日くらい履いたのがいいのさ。


『こうもり傘』

 量産型食用バットマンさ。ちょっと骨と皮が硬いけどね。


『エコバッグ』

 エコに配慮して、中身は抜いてあるから。生ゴミ出なくていいでしょ?


『ほっちきすの針』

 最近鉄分足りてないよね。あ、食べやすいように筋入れてあるから。


『市バスの回数券』

 いや、タダ飯はまずいかなと思ってよ。これで行けるとこまで。天国以外は。


『ポケットティッシュ』

 あ、まだ生煮えだから。完全にどろどろに溶かさないとおいしくない。皮は剥いてね。


『スマホ』

 具材になると思って煮てみましたって、ニコ動に出すのー。


『アボカドの種』

 よかったー。俺のだけ食材。


『ハーゲンダッツみたらし胡桃』

 限定だったのに。二十軒も店回って、やっと見つけたのに。くるみどこにあるか、もう分からんやん!


『ディズニーオンアイスの入場券』

 す、すべったあ。


『ラブレスのナイフ』

 こんなくだらんパーティー仕込んだヤツ! バラしてやるっ!


◇ ◇ ◇


 闇鍋。


 あなたは招待されたパーティーで、鍋に得体の知れないものを放り込んでしまいました。なんでそんなものを鍋に放り込んだのか。それを他のお客さんに申し開きしてください。


 なにも下準備が要らない、お道具もお相手も要らない、一人で出来る簡単な言葉の訓練です。どうかお暇な時にでもお試しください。


 ばかみたい。そうですね。


 でも、世の中はそういうばかみたいなものの集合体です。言葉も当然そういう『ばかみたい』なものの一部。うまく使わないと、言葉ではなく、あなたがばかみたいだと思われてしまいます。


 機転を効かせる。直球を投げない。ほんの少しの訓練で、必ずそれは上達するんですよ。


 具材がいい感じに煮えてきたら。今度は、それをより上質な『笑い』に誘導してみてください。えげつない闇鍋が。特上の料理に変わるかもしれません。



【おしまい】

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