クレーマークレーマー

- 条件設定 -


 あなたは、とある飲食店の店員です。そこは制限時間内にいろいろな料理を自由に食べることができる、バイキング方式のお店です。料理を盛ってあるトレイを見て回り、残り少なくなったものを新しいものと入れ替えるのがあなたの仕事です。


 あなたがサラダバーのチェックをしようとしたら、その近くの席のお客さんに苦情を言われました。


「なあ、姉ちゃん。あのおっさんな、さっきからあそこに張り付いて、備え付けのトングでばりばり野菜食うとんねや。気持ち悪ぅてかなん。なんとかしてや!」


 苦情を言ってきたおっさんは、見るからにもんもんしょってそうな、その筋の人です。こわ。


 確かにサラダバーにはきしょいおっさんが一人、両手にトングを持って、野菜やら芋サラダやらを食い散らかしています。非常識そのもの。しかも目がイってます。誰も近寄りません。取りあえず、やんわりと説得してみましょうか。


「あの、お客様……」

「ん? なんだあ?」

「申し訳ありませんが、お食事はテーブルでお願いできますでしょうか?」

「おらあ、金払って食べ放題に来てるんだ。どこでなに食おうがおれの勝手じゃねえか」


 むぅ……。



【対応その1】

 背後から襲いかかって、おっちゃんを裸締めで締め落とす。ちゅうちょすると反撃を食らうから、確実に短時間で頸動脈をヤること。


【対応その2】

 サラダバーは 本日終了しました、と看板を出して、完食証明書を渡す。


『おめでとうございます。あなたは見事に完食されましたので、ここにその偉業を讃え、またの入店を固くお断りいたします』


【対応その3】

 すみません、どれかに有棘顎口虫っていう怖い寄生虫の卵が混じっちゃったんですと、心底怯えた顔でヤバそうに言う。演技が甘いと、お前責任取って全部食えと突っ込まれる。


【対応その4】

 おっちゃんが諦めるか、先に手を出してくるまで、しぶとく常識論で説得の無限ループを回し続ける。自分の方が先にぷっつんしたり、ぎぶあっぷしてはいけない。


【対応その5】

 最初に苦情を言ったそのスジの人を焚き付けて、おっちゃんとがちんこふぁいとさせる。ただし、二人がグルになってる可能性もあるので、その点だけは要確認。


【対応その6】

 トングの使用はお一人様一回限りで、それ以上は別料金ですと、法外な値段をふっかける。そんなことはどこにも書いてねえと言われたら、バカには見えない仕様となっておりますと答える。


【対応その7】

 店長を呼んで、バトンタッチする。その際、物陰から応援姿勢を見せることを忘れてはいけない。また、店長が劣勢になった時に義侠心を出してはいけない。あくまでも店長は生け贄である。


【対応その8】

 料金を払って客の身分を手に入れ、サラダ戦線に突入する。いかなる食いしごきになっても、絶対に引いてはいけない。おっちゃんのトングの行く手を阻み、先手を打って確実に標的を食い尽くすこと。


【対応その9】

 あめちゃんを握りしめ、自分は世界最強の大阪のおばちゃんだという強い自己暗示をかけて、おっちゃんを成敗する。そのまま暗示が解けなくなる恐れがあるが、当局は一切関知しないからそのつもりで。


【対応その10】

 その場で仕事辞めます宣言をして、やけ酒を食らう。ばっかやろう、やってられるかってんだ、っきしょうめ! おい、そこのおやじっ! トング持ってぼーっとつっ立ってんじゃねえよ! なんかつまみ持ってこいっ!


【対応その……】


 あとは、みなさんのオリジナルを考えてみてください。自分自身の危機管理まにゅある。備えておくのは、大事かもしれませんよ。



【おしまい】

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る