バランス オブ パワー


……何?、わしの話が聞きたいって??

ほう、学校の宿題なのか……年寄りに話しを聞いて来いっていうことじゃな。小学生じゃ知らないのも無理はない。じゃあ、じいちゃんが話してやろう……。


◆◆◆


ことの発端は、火星が地球に宣戦布告して、火星人が攻めてきたことなんじゃ。そのころの人間はもちろん、おったまげたさ!!

だって、宇宙に地球人しか知的生物はいないとおもっとったやつらが大半だったからな……。

おかげで、もう、有史以来、初めて世界がひとつになって世界政府ができたんじゃ。

未曾有の外敵にイデオロギーだの宗教だのいっておられんからな!!


◆◆◆


ところが、迎撃に出た、スペースシャトルはあっさりやられちまったんじゃ!!

だいたい、相手は火星から攻めてこようとしているのに、こっちは成層圏あたりでウロウロ……気合の入り方がちがっとるわい。

そのころの、世界政府大統領 ドウエル・マクドウエル(外人はへんな名前つけるのう……直訳するとドウエルの息子ドウエルじゃ)ってやつは詐欺まがいの商法で大金持ちになった悪いやつでな……。

(学歴はないがIQ160だったそうじゃ。)

何をおもったか、全宇宙にメッセージを送り始めた。


「さあ! 地球の支配者に火星が名乗りをあげました!! 他にはいませんか!? 早い者勝ちだよ!!」


◆◆◆


何がびっくりこいたかって、このメッセージにすぐ反応があったことじゃ。


「我々、金星人は地球の支配権を主張する!」

「いや、地球は水星のものだ」

「地球は土星連邦のものである!!」


なかにはこんなのも……。

「地球は我々、月人のものに決まっている」

このときは100億の地球人が突っ込んだもんじゃ!!

おまいら、アポロが着陸したときどこいっとたんじゃい!?


……えっ?、アポロってNASAのでっちあげで、アリゾナのスタジオで撮影してた? 歴史の本に書いてある?? そうじゃったんかい??


◆◆◆


とにかく気の短い金星人が火星人と戦争おっぱじめたところに、水星人がわりこもうとしたら、突然、木星から

「太陽系の全惑星は木星帝王のものである!!」


これで、急遽、金星、火星、水星(あと、月人とかアステロイド人とかもろもろ)の『内惑星連合軍』と木星、土星(前から木星の属国だったらしい。)の『外惑星帝国軍』に分かれて全面衝突じゃ!!


どうなるか人類全体、かたずをのんで見ておった。


◆◆◆


ところでやはり、外惑星帝国軍は太陽系の支配者を名乗るだけあって強力じゃった。イギリスのブックメーカーなんぞ外惑星帝国軍:1、内惑星連合軍:2でオッズつけっとったくらいじゃ。内惑星連合軍がじょじょに押され始めてきておったところに……


なんと、天皇星、冥王星(21世紀に惑星から格下げになったが)、海王星、第十惑星の『遠外惑星連邦軍』が参戦してきおった!!


このまま、外惑星帝国軍が勝って、太陽系支配されてもたまらん……弱った

帝国とスキをみて連合を倒してついでに地球をいただこうと思ったようなん

じゃ……。


◆◆◆


帝国はさすがに強くて、しぶとい。連邦軍と連合軍はともに帝国をはさみうちにしながらも、別に味方でもないから、小競り合いをつづけておる。いつまでやってもらちがあかない、こう着状態にみえたのじゃが……。


しかし結局、連邦と連合は同盟を組んで、どうにか帝国を押さえ込むことに成功したのじゃ!!


あーあ、これで地球も侵略されてしまうのかと思った矢先……


「地球は我々、マゼラン星雲のものだ!!」


◆◆◆


……で、回りまわって今、地球の支配権を争っているのはアンドロメダ皇帝軍と馬の首星雲共和国というわけじゃ。そんな遠い星の宇宙軍が地球のすぐ隣でドンパチやっているのはそういうわけなんじゃ……。


……何?地球って今、危機なんじゃないのか?? なんで世界の人たちはのんびりしてるんだ? いや、そうでもないぞ、なんせこの争いのおかげで火星人襲来から千年も平和にくらしておるんじゃ!


はるか昔20世紀では『冷戦』と言って、アメリカとソ連とかいう国が核兵器を持ちながら、世界中でにらみ合って小競り合いをしていたと聞く……。それでも、日本はずっと平和だったそうじゃぞ。


それと本質的に、いったい何がちがうというんじゃい?


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