第5話

 もう少し自由になれればなと思いながらも、日常というのはこういうものなのだから仕方ないだろう。

 住めば都というか、案外居心地は悪くないんだ。


「いらっしゃいませー」


 今日も声が通ってる。閑散とした店内。

 どうだろう。しかし最近いつも通りでありながら、それが少し変わってきているような気がする。


「いらっしゃいませー」


 カゴの中のおかしやら飲み物を袋につめていく。足されていく金額。

 視線の先にいるのは、やっぱりあの子だ。


「400円になります」


 小銭を出す際中までも視線はこちらに向いている気がする。なんだか不思議な子だ。


「おつり600円になります」


 つり銭を財布に入れながら、視線はまたこちらに戻る。

 何かを言いたそうに口が開きかける。


「ありがとうございましたー。またお越し下さいませ」


 後ろがつかえているのでそうもいかない。後ろの客の存在に慌ててその身をどける。

 店を出る瞬間、彼女はもう一度こちらを振り返った。


 ――ひょっとして、まさかなー……。


 少し心が浮ついている。

 まさか、ここでこんな感覚に出会えるなんて、思ってもなかった。

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