第3話

「いらっしゃいませー」


 コンビニという定番バイトは、なんだか気軽に出来てしまいそうな感じもするが、実際以外とやる事は多くて、接客、掃除、品出し、調理。わりかしオールマイティを求められる職場だ。でも一年そこらも働いていれば慣れてくるもんで、今ではそつなく全てをこなす事が出来るようになっていた。


 時給はそこまでよくはないが、ここのバイトは悪くない。まず人が少ない。片田舎の地元コンビニに人が殺到する事は滅多にない。これは非常にありがたい。忙殺とは程遠い環境。


「ごっちんー、俺チョコ欲しいよー。今年はチョコ欲しいよー」

「じゃあ、そんなりょうちゃんには後でポアロ買ってやるよ」

「そういう事じゃなくってさー」


 そしてバイト仲間や店長も穏やかで気のいい人達なのもとても良い。苦に感じたのは仕事を覚えるまでの期間だけだった。


「チョコねー」


 今年はもらえるだろうか。まあおそらく大学のサークル仲間からはいくつかもらえるだろう。もちろん本命ではなく義理だが。


 本命をくれるような彼女も今はいない。去年別れたばっかりだ。フラれた側なせいか、一年も前なのにいまだに記憶はわりかし新鮮ですぐに楽しい想い出を呼び起こせる。それがまた悲しい。


「いらっしゃいませー」


 あー、かわいい子入って来たな。あんな子と付き合えたらいいのになー。

 今年は彼女出来るかなー。

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