第29話 枯原へ耳をきれいにして行けり

二〇一〇年六月号が、私が「鷹」に在籍した最後の号になった。そして私は中原道夫の「銀化」の門を叩いた。理由は簡単であった。「銀化」の作品が、私にはとても刺激に満ちていたからだ。しかし別の畑で育った私を、しかも十年も前の過ちとは言え、「鷹」にいることを黙ったまま「銀化」の句会に出席したことのある私を、中原道夫が快く受け入れてくれるかどうか、とても不安であった。果たして自分の決断が正しかったのかどうかという迷いも、拭い切れていなかった。ただ、「銀化」の作品に接することで、間違いなく俳句に対して新鮮な気持ちを取り戻せたことだけは確かだった。中原道夫選のもとで、思い切り暴れてみたいという気持ちが沸々と湧きあがってくるのを覚えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る