第8話 秘密の中庭

どうやらこの学校には

部活が数多く揃っているらしい

手土産を渡すとき、若い先生がもらしていた

どうやらこの学校では部活動の数と

顧問教員の数が合っていないらしくて

一人につき二つの顧問なんてのが

常であるとか…

この先生も例にもれず、フットサル部とジャズ研究会を掛け持ちしている

なぜ今時の学生が若いうちから ジャズなんてものに励むのか…

初対面でそんな愚痴をこぼされてしまった…


「花山さん、ちょっと見学していく?」

夏という半端な時期に来た私を、早く学校に馴染んでもらうように先生なりの配慮だろうか…

「いいんですか、ありがとうございます

ぜひ見学させてください」

「よし、じゃあ部員を呼んどいてあげよう。」

「ありがとうございます…」

「あいつら、今練習中だと思うからちょっと待っててな、迎えに来させるから。」

「その間そこらへん見て回っててな、この学校、内装だけは面白いから。楽しんで。」

内装?木造オンリーじゃないんだ…

「助かります、じゃあお言葉に甘えて」

「よし、いってらっしゃい。」

照れる…

「いってきます」

職員室を後にする私を先生は姿が見えなくなるまで手を振ってくれていた…こじんまりと…


転校生は人生初だから ここまで手厚くしてもらうとなんだか妙な感覚だ…

まあ、すぐ慣れることかな…


私が中庭で涼もうと 歩いていると大きな木が

校庭のど真ん中にぶっ立っているのが見えた…

当然ここは真下まで行くのが作法だろう

おお…でかい…なんたる…

これは……いい樹だわ…

そうだ水があったはず、カバンの中にいろはす

が半分ほど残っていて、もちろん温くなっている…まあ 関係ないな… んくんく…っはぁ

染み渡るねぇ、どうだい、きみも

私のあとで申し訳ないけど、どうぞ…

赤の他人には見られたくない場面、恥ずかし…

ちゃぱぱと 樹の根元に残りをおすそ分けすると

涼しい…というか強く激しい突風が

中庭を突き抜けた……

ふぅ…涼し…






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