第3話 骨折り損にて
夏といえど日が落ちると肌寒いもので
ほんのすこし前まで
嫌がらせのように照っていた太陽も
おとなしくなり、空の番を月と
入れ替わっている
夕焼けの日が差す田んぼ道で
私は深い眠りから目をさます
天然ウッドチェアに惹きこまれた
私は、いつの間にか
こんな時間まで眠っていたみたい…
公道横の樹の下で…
やってしまったな…ん…学校は明日でいいか
ああ、今日で済ませたかったな…
手土産の詰め合わせゼリーは完全にもとの冷たさを失ってるし
迷いすぎたのは、謝らなきゃ
今から、家に帰って、風呂に入って、夕飯食べて、歯磨きして
女はいろいろ大変だ、
とりあえず来た道を戻って家まで帰るとしよう
母さんにはなんて言い崩そうか
怒られること間違いなしだよ、もう
ああ、愛おしい我が家
住み始めて二週間と言っても 見知らぬ土地で
見知った景色も 知り合いもいない今、
いつも帰れる、家へ愛着の湧いた私。
前の家にはなかった
和室から飛び出した軒先と囲む砂利の多い庭
生まれてこの方アパート暮らしだった私には
この一角を早くもお気に入りの夕涼みスポットに認定していた
今日も私はそこで
蚊取り線香とシャンプーの混じった独特でニイっとした匂いを感じつつ
焦点も合わせず目の前だけを見ている
母の説教を請け終えた私に今日はもうなにもすることはない
あとはゆっくりと一日が終わるのを待つだけで
明日のことで今日できることはもう何もない…ふぅ…
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