第8話

  朝、いつものニュース番組は緊急で内容を変えたようだ。

「今朝、日本各地にて魚が一気に死亡するという事件が起こりました、中継が繋がっております、中継の春香さん」

「はい、現場の春香です、こちらの川では大量のコイが陸上に上がり死亡しています、専門家監督の元で近づいてみようと思います」

 キャスターと専門家がコイの死骸に近づく

「あれ、あのコイ少し動いてませんか、カメラさん、こっ……」

 キャスターの声はそこで途切れた

 コイの目から緑色で細長い物体が出てきてキャスターの腹を突いたのだ。

 そのまま緑色の物はキャスターの腹に入りきり……

 ここで画面は「しばらくお待ち下さい」に変わった、可愛らしいマスコットキャラクターが頭を下げている。

「なんだよ……今の」

 いや、俺はなんとなくわかっていた、あの声が語りかけてきたのだ。

 {horsehair worm}

 horsehair worm、よく考えるとハリガネムシの別名だ。

 ハリガネムシ、カマキリなどに寄生して水中に移動するミミズのような外見の寄生虫だ。

「でも….…」

 頭でわかっていても否定したくなる、あの緑色の物は鉄パイプぐらいの大きさだった、コイに入っていたのが不思議なくらいだ。

 {horsehair worm}

 頭に響く

「お前は何なんだよ!」

 思わず叫ぶ

 {horsehair worm}

「だからそれだけじゃわかんねぇよ! お前は何者なんだ」

 {horsehair worm}

「……何なんだよ」

 {horsehair worm}

「お前……まさか」

 {アイ……ア……ム}

 {horsehair……}

 {アイアム、horsehair worm}

「……なるほどな」

 俺はベッドに寝転んだ。

 そう、俺は既に寄生されていたのだ。

 ハリガネムシに。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る