第38話

「シェリ姉がどうしてシリアルキラーズの名前を知っているんだ⁉︎」


僕は慌ててメニューからメッセージを開き、返信する。


『どうして』


と。すると


『sheril:どうもね、知り合った人がその人たちにキルされたんだって』

『Aria:それでどうしてシェリ姉が?』

『sheril:街から出ようとしたら襲われて慌てて街に逃げ込んだの』


街の中は基本的にダメージを受けない。デュエル以外は。

だけど街の外では、フィールドではその限りではないんだ。


『sheril:うーん。今みんなで偵察したんだけどね』

『Aria:?』

『sheril:どうにも街から出ようとしたプレイヤー全員をキルして占拠しちゃったみたい』


*****


『dawn:最初の街が占拠された件について』

『bag:スレ立て乙って言ってる状況じゃないか』

『bag:それよりした奴の事は分かる?』

『dawn:シリアルキラーズって名乗っているらしいよ』

『mammon:本当?』

『diabolos:ぽい』

『dawn:うお⁉︎』

『Lucifer:行ける奴最初の街に転移して占拠状態を解くか?』

『mammon:アリアちゃんが単独行動してないと良いんだけど……』


*****


「ひよちゃん!」

『ちぃ(アイスランス)!』

「なっ⁉︎」


プレイヤーの1人を吹き飛ばす。そして


「ミーティアメテオ!」


ぶっ飛ばして最初の街の中に駆け込む。

今ぶっ飛ばしたのはシリアルキラーズのメンバーのはずだ。だって街の入り口を封鎖するように5人くらいで固まっていたもん。


「シェリ姉たちはギルドの前にいるって……!」

『ちぃ!』

「あっちだっけ?」

『ちぃ⁉︎』


……ダメだ、迷った。だから地面を蹴って跳び上がる。そして屋根の上を走る。


「アリアちゃん!」

「シェリ姉! 無事だった⁉︎」

「私はね」

「……何人かキルされたの?」


僕の言葉にシェリ姉は頷いて


「私たちはとりあえず戦力を把握しようとしたんだけどね……」

「占拠って言うか取り囲まれているんだよね?」

「そうだよ」

「ならシェリ姉たちは……シェリ姉にこの前に転移アイテム纏めて渡さなかったっけ?」


僕の言葉にシェリ姉は驚いた表情になって


「だけどそれじゃあ新規プレイヤーが危ないと思います」

「……そうだね」

「アリアちゃん、どうしたら良いと思う?」


デスペナルティはアイテム一部ドロップに装備一個ドロップ、経験値も失われる。だから


「……シェリ姉、僕のお店に行ってシエルたちに応援を求めて」

「え?」

「シリアルキラーズ対策に呼んだけどシェリ姉のメッセージが来たからね……」

「それならアリアちゃんが呼んだら良いんじゃない?」

「無理だよ」


僕は周囲を見回して


「街の入り口を封鎖してくれる?」

「どうして?」

「逃げ込まれないように」


*****


「ひよちゃん!」

『ちぃ(アイスランス)!』


ひよちゃんの放った氷の槍は不意打ち気味に街を取り囲むプレイヤーの1人を撃つ。


「ダブルラッシュ!」

「が⁉︎」

「フルバスター!」


僕の二本の剣が全損させる。直後、後ろからの声に地面を蹴って回避。そのままの勢いで切り掛かる。


「こいつが噂の!」

「仕留めろ!」

「こいつをやれば!」


僕を狙って武器を振るうプレイヤーたち。遅い。


『ちぃ(アイスランス)! ちぃ(アイスボール)!』

「僕を仕留めて何になるのか教えてくれないかな! スターダストスラスト!」

「バスターシールド!」


僕の放った剣は盾との激突で少し逸れる。しかし3連撃だ。


「が⁉︎」

「引け! 俺が行く!」

「巫山戯んな! 次は俺だ!」

「いや、俺だ!」

「誰でも良いよ! ソードリバーサル! メテオスラスト!」


野球のようにぶっ飛ばして


「ミーティアスラスト!」

『ちぃ(アイスボール)!』


僕とひよちゃんはそのまま動き回って


「……この方向は終わったかな」


僕が呟いた瞬間、メッセージが。


『mammon:アリアちゃん、今どこ?』

『Aria:最初の街で不埒者をぶちのめしている』

『mammon:やっぱり!』


マモンはそう言ってメッセージを止める。そして


「いたぞ!」

「あいつだ!」

「キルしろ!」

「……君たち、シリアルキラーズってギルドなんだよね?」


僕の言葉に武器を持って走って来たプレイヤーたちが足を止めて……同時に頷いた。


「知ってんのか」

「それでわざわざ来たのか?」

「お人好しにもほどがあるぜ!」


そう言ってナイフを構えて突っ込んで来る。突き出されるナイフを回避してナイフを持つ腕を切り落とす。そのまま首を落として


「首は落ちても体力がある限り死なない」

「なにっ⁉︎」

「さぁ、どんどん来なよ。全員キルしてキルしてキルし尽くすから」


そして


「君たちのギルドリーダー、幻影面(ファントムマスク)をキルする」

「リーダーの名前を知っているのか⁉︎」

「何故だ⁉︎」

「まさか……同業⁉︎」

「違う!」


僕は二本の剣の柄を握り直して


「覚悟は良い?」

「へ、へへ……キルすれば!」

「金がたんまりはいる!」

「それに立場も上がるんだ!」

「君たちのギルドにどんな制度があるのか知らないけど」


僕はため息を吐いて


「ダブルテンペスト!」


16連撃を放つ。そして全損させる。


『ちぃ!』

「もう、暴れたら落ちるよ」

『ちぃ!』


頭の上で足踏みするひよちゃんを窘めて


「ほら、次の場所に行くよ!」

『ちぃ!』


*****


「スプレッドボムアロー!」

「ウィンドボム!」


私の放った矢は拡散して、激突と同時に爆発する。ダメージも小さくない。


「ベル、ここにあいつはいないみたいね」

「そりゃなんとなく気付いていたけどよ……どうする?」

「他の位置もみんなが行っちゃったしね」

「傘下のメンバーだけで対処出来ると思うか?」


私はベルの言葉に少し首を傾げて


「……幻影面はかつてのアリアちゃんですら互角だった。ベータテスターだとしたら……」

「勝てない、そう思うか」

「魔王」


私たち8人は4つある入り口のうち3つを担当している。残りの一つはアリアちゃんがいる。


「アリアは1人で大丈夫だ。後は俺たちがあいつをあぶり出すだけだ」


魔王はそう言い切った。だけど


「心配だなぁ……」


矢を弓につがえて放ちながら私は呟いた。


*****


「勝てないだろ⁉︎」

「逃げろ!」

「クソ! 通しやがれ!」

「逃がさないよー?」


僕は二本の剣を構えたまま街に逃げ込もうとするシリアルキラーズを追いかける。街の入り口は内側のプレイヤーたちによるブロックで封鎖してある。

ブロックとは街の中、つまり危害を加えられない場所で行う人の壁だ。どけようとするのも危害だから、という理由でどかせない。しかし


「武器を叩きつけられると怖いけど大丈夫!」

「余計な事を⁉︎」

「君たちは一人残らずキルするよ。良かったね、プレイヤーキルがシステムで推奨されていて」


僕の言葉にカタカタと震えだすプレイヤーたち。


「リアルで死ぬわけじゃないんだ。大丈夫だよ」

「ひっ⁉︎ やめっ⁉︎」

「スターダストエンプティー!」

「ソードパリィ!」


僕の放った15連撃はそのプレイヤーに防がれた。

茶色いローブで顔を隠した片手剣士。間違いない。


「やっぱりお前か! 幻影面!」

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