第2話戦争と平和

 70年ほど前、戦争が終わった。平和な時代があるという。もしくは平和な時代が来たという。目ざとい人なら現代においても平和などないと知っているだろう。現代日本にもどこからでも湧いてくるかわからないような犯罪や事件、事故。それで毎日人が死んでいる。誰も彼も無関心だ。下級労働者の悲哀なんて判る人もいないだろう。社会の底辺で生きる人々のことを。

 戦争は終わった。新しい時代がやってきた。母が生まれ育った明石の市街地は焼夷弾で焼かれ焼け野原となった。自宅も学校も焼け落ちた。戦後はその為、餓死者も出た。もちろん焼夷弾で焼け死んだ人もいる。母の父、つまりぼくから云えば祖父は家族を連れて船で淡路島に逃げたという。焼夷弾の雨降る中を。彼は漁師で船があったのだ。その為、母の家族は生き延びた。新しい時代に向かうことができたのだ。

 新しい時代? そんなものがあるのだろうか。ぼくはそのことにすら疑問が湧く。新しいとはなんだろう。創造と破壊そのものなのだろうか。他国から蹂躙され、消え去った日本という国。敗者はただただ勝者に服従するばかりだ。これが戦争であるのか? 人類創生殺し合いを続けてきた人間の宿命なのだろうか。

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