2同じ夜、どうか彼女にも花を
暗い部屋でカーテンも閉め切り、床に置いたランタンだけの明かりが灯っている。
うっすらと伺える部屋の様子は、ぬいぐるみや女性らしい小物がいくらか置いてあり年頃の女の部屋だった。
そこで私、真城は手元を照らしながらナイフを研いでいた。
大きめのサバイバルナイフから投げる事に特化した小さいスローイングナイフが合わせて二十本は並んでいる。
それを一つ一つ時間をかけて磨きあげていた。
少し前までは普段持ち歩いている三本のサバイバルナイフと二本のスローイングナイフだけを研いでいた。
しかし、ジョンさんを巻き込んだあの一件があってからはこの全てのナイフを身に付けて、研ぐ必要ができた場合もまた全部のナイフを研いだ。
ジョンさんと私のペアは館でも天国教の間でも最強と謳われていた。
攻撃と防御を兼ね備えた私の能力と面倒な銃器や通信類を無効化するジョンさんの能力。
でも、銃器を使用できない信者は素手かナイフで挑んでくる為、同じように銃を使えなくなったジョンさんの身は私が守らなければいけなかった。
それなのに、私はあの時に守ることができず守られてしまった。
ジョンさんは気にしていないし、この役目も頼まれてしているものでもない。
私のプライドの問題だった。
このままでは、私とジョンさんのペアがディーラーさんによって解消されかねない。
最強が負け続けてはいけない。
最後のナイフを研ぎ終えて時間を見ると0時を回っていた。
考え事をしながら研いでいると驚くほどに時間がたつのが早い。
天使の番組も見忘れてしまったが、何時も同じことを言っているだけなので問題もないだろう。
汚れた手をそのままにしてベッドで横になる。
このまま汚れた手でジョンさんに会えば、朝のミッちゃんの時みたいに私にタオルを手渡してくれるのだろうか?
私の自室から見えたあの光景は羨ましく、どうやっても手に届かない眩しいモノだった。
どうか私にも。そんな期待を抱きながら眠りにつく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます