浅葱蒼&萌黄千草
2.1
僕、
魔法少年になった。
「蒼、今日放課後なんか遊んで帰るか?」
「うーん、今日も母親の家の手伝いをしようと思ってる」
「……お前、マザコンだな」
「そういわれても致し方ない」
うわあ、ストレートだなあ。そんなことを言いながら、友人の金子は教室を出て行った。いつもの冗談だ。そもそも金子は陸上部に入っているため、僕と遊ぶ暇なんてない。はずだ。
すると、
「あーおーっ! 迎えに来たよー! むっかえにきったよー!」
急に甲高い、元気のいい声が教室後方から聞こえてきた。
顔の温度が急上昇する。思わず下を向いた。
ところどころから、苦笑がもれる。
しかし、声の持ち主はかまわずそのまま僕のいる教室中央にずかずかと踏み込むと、僕の顔を覗き込んだ。
程よく色づいた頬が、少し短めのまつげが、どアップになって視界に入り込む。
首ごと目をそらした。
「あ、何照れてるの? そんなにあたしが迎えに来たことが嬉しい? 嬉しい?」
「早く一人で帰れ」
「えー、いつもそう言うじゃんー千草さん寂しいーさーみーしーいー」
こいつは、千草。
身長百六十七センチ、視力ともにA、体重その他もろもろ秘密。
プロポーション抜群。
典型的な「黙っていれば美人」だ。
「あ、やっぱり照れてるー照れてるー」
「二度繰り返すな」
「うーん、これがあたしの話し方って言いますかー。いーますかー」
こう話さないとなんか無理なんだよね、無理無理、と千草は手をひらひらさせた。
千草の登場とそのキャラにドン引きしたのか、教室からクラスメイトの姿が消えていた。
開けた窓から、柔らかな春風が入ってくる。
隣にやかましい奴がいなければ、素敵な放課後だ。
そのときだった。
「あ、あの!」
何かもこもことした、小さな黄色い生き物が窓枠に現れた。
しゃべるひよこ、だった。
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