1.3
あの、ファンシーでふわっふわの衣装を着た、「わるいやつ」と戦うあれである。
さっきは茜さんに追いかけられていただけなので、アメジストから身体能力系の簡単な力を借りるだけの「サポートモード」ですませた。
変身、はさすがに恥ずかしいので日が出ている時間帯はやらない。
魔法少女。
別に、ファンタジーではない。妄想でもない。残念ながら、現実だ。
……少女、というには少し私達の年齢が高い気がするけれども。
ひょっこりと
「あ、おはよう――ヴェリテ」
私は片手を上げたが、
「おはよ………すぅ」
力尽きたようで、横に倒れてしまった。
「ふふふ、可愛い」
「ヴェリテは大丈夫なんだね。あいつ、『僕』だの『俺』だの言うけど」
一瞬、
しまった、デリケートすぎた、か?
しかし次の一瞬には、元に戻って紅茶を味わっていた。私もカップを口元へと運ぶ。今日はアールグレイのようだ。
「うん。ヴェリテちゃんは性別不明だしね――。一人称がころころ変わっていくし。それに、単なるひよこだし。ひよこは怖くないよ。怖くない」
首を振って怖くない、なんて否定しながらも、それはまるで自分に言い
聞かせているみたいだった。
それゆえに、引きこもりでもある。
小学生のころ、杏は誘拐されたのだ、と茜さんから聞かされた。
きっかけは、家出だったという。
茜さんがふと目を話した隙に、
しかし、
公園で一人ぽつんとブランコを漕いでいるところに、男達が現れて
その後起きたことは、誰もわからない。
ご両親と犯人の間で、何かしら交渉が行われたのだと思う。結果として、
ただ、男性へのとてつもない恐怖は消えていなかった。
私が興味半分本気半分で忍び込むまで、
「それに、ヴェリテには感謝してるんだ。私に、踏み出す力をくれたから。――もちろん、
その言葉に、私はうれしくなる。誘ってよかったと、本当に思う。
『魔法少女にならない?』
そんな、中二病くさい台詞を、中二病くさいシチュエーションで吐いた日のことは、よく覚えている。満月がとてもきれいだった。
今日のように窓枠に足をかけてバランスを保ったまま、私はきざったらしく
『まほ……う、しょう、じょ?』
『そう。魔法少女。貴方の力が、必要なの』
どこかの漫画で言っていた言葉をそのまま引用して、とことん
結果、夜限定、ターゲットは女性系だけ、という条件で彼女は魔法少女になることを了解した。
約五、六年間外に出ていなかった
それが今では、
「……で、そんな暗い話は置いといて。今日は誰? 何をやっつけるの?」
狩りとも呼べるような計画を、楽しそうに尋ねてくるまでになった。
……育て方を間違えた気がしないでもない。
私は一つ溜息をつくと、改めて
こういうときの
肩に届くくらいの、まっすぐな黒髪がはらりと彼女の顔を覆う。邪魔そうに横髪を耳にかけた
目は少し茶色がかっていて、黒目が大きい。そして、とても澄んでいる。それでいて、確かな意思を持っている。汚れた世界なんて見ない――見せたくない、そんな瞳。
守ってあげたくなるくらい、素直で、優しくて、はかない。
私の、大切な存在。
いつまでも、隣に居たい。
そのためなら、私は何だってしてみせる。
ぼうっと見つめてから、私はあわてて話し出した。
「えっと、今回の
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