ゴーグルの人魚

ひび割れた“新世界”が空っぽの渡り廊下で鳴る

帰宅しない帰宅部員 プールを見下ろしてる


西の空いろどってた終わる夏の輝きも

最後のひとはけが今 青に変わる


黒く波打つ水の中

ゴーグルの人魚は一人

自分のリズム探すよに

背泳ぎでながす


暗く艶めき うねる面(おも)

人魚の腕はゆっくりと

まるで慈しむように

水をかいてゆく


他人のペースで笑えずに昼はいつでも一人で食べる

肩越しのクスクスが背中を固くする


借りた言葉 話すなら いっそ声など捨ててしまおう

でも今のあたしもあたしのパロディーみたい…


黒く波打つ水の中

ゴーグルの人魚は一人

自分のリズム探すよに

背泳ぎでながす


水の言葉を聞いている

水にやさしく抱かれてる

人の言葉の茨から

守ってくれている


ゴーグル越し人魚が見上げる最初の星

帰宅しない帰宅部員 それを想像してる


この窓辺とプールを隔てる長い距離と

二人わかつ無関係 ぼんやり想ってる


黒く波打つ水の中

ゴーグルの人魚は一人

自分のリズム探すよに

背泳ぎでながす


分かちあえない悲しみを

それぞれだいて暮らしてく

彼女は彼女の傷を生き

彼は彼の日々を病む


黒く波打つ水の中

ゴーグルの人魚は一人

自分のリズム探すよに

背泳ぎでながす


暗く艶めき うねる面

人魚の腕はゆっくりと

まるで慈しむように

水をかいてゆく


ひび割れた“新世界”が空っぽの校庭を横切る

同じ音がつつんでる まじわらぬ痛みを


↓曲

http://kyoku.meta-scheme.jp/works/GoggleNoNingyo.mp3


↓動画

http://youtu.be/hRM64HsMOE4

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