第五話「夢のまた夢 中編」

 深夜。

 彦右衛門は藤吉郎と美華と共に大坂城の中へ入った。

 どうやって入ったかというと


「こんな抜け穴があるとは」

 彦右衛門が辺りを見ながら言う。

「ああ。しかしこれまだ残っとったんじゃのう。もう埋められたかと思うとったわい」

「いえもしかすると、後で利用しようと思ってそのままにしておいたんじゃ?」

 美華がそんな事を言った。

「そうかのう? まあこれのおかげでひろいは逃げれたしのう。というか、ワザと逃がしてくれたんじゃがな」

「あの、拾とは?」

 それを聞いた彦右衛門が尋ねる。

「ああ、ワシの倅じゃて」

「倅? ……え、藤吉郎、拾。まさか?」

「ああ、後でちゃんと話すから今は言わんといてちょーよ。おそらくお察しのとおりじゃがにゃあ」

「……わかりました」


 そして三人は城の中庭に出た。


「え~と、だいぶ雰囲気変わっとるからどこだったか」

 藤吉郎が場所を思い出そうとしていると

「隠れてください。誰か来ますよ」

 美華に言われて三人は側にあった大きな木の後ろに隠れた。


「ふむ、ここにあるのかあれは?」

「そのようです、おそらくあの木の下かと」

 そう話していたのは数人の忍び風の男達だった。

「あれを手に入れれば、我らは」

 そう言って男達は木に近づいて来た。



「どうやら向こうも同じ目的のようですね、そしてあれはこの木の下に」

「木の下に埋めた覚えはないがのう。後で植えたんかな」


「どうしますか? あやつら大人しく引きそうもないですが」


「ええ。それにあいつらからは妖魔の気を感じます、もしかすると取り憑かれてるのかも」

「え、美華殿は妖魔をご存知で?」

「はい、御役目柄。それにわたし妖魔と戦えますよ」

「そうでしたか。拙者もひょんな事から妖魔の類を斬れる剣を授かりました」

「じゃあ二人であいつらを」

「わかりました。ではまず拙者が」


 彦右衛門が木の陰から飛び出した。

「な!? なんだ貴様!」

「お主達ここにあるものをどうするつもりだ?」

「貴様、あれの事を知っているのか!?」

「よくは知らん、だがお主達に渡せはせん!」

「ならば死ね!」


 忍び風の男達は剣を抜いて一斉に襲いかかってきた!

「うりゃああ!」

「む! そりゃあ!」

「ギャアアア!」

 彦右衛門は忍びの一人を斬った。


「おお、彦右衛門さんやるじゃにゃーか」

「よし、わたしも……はっ!」

 美華は手から気を放つと

「うわあああーー!?」

 まともに攻撃を受けた忍びは倒れた。



 そして

「これで終わりか?」

 忍び達は全員二人に倒された。

「いえ、まだ妖魔の気は残っています」

 美華がそう言った時、忍び達の体から黒い霧が出てそれらが集まり


「お、おのれ~!」

 黒い猿のような姿になった。

「なんで猿?」

「意味などない、ただの思いつきだ」

「思いつきかー!」


「彦右衛門さん、叫んでないであいつを! わたしが動きを止めますから!」


 ドオーン!

 美華はそう言って気を放って黒い猿の動きを止めた。


「ぐおおお!」

「とりゃああ!」


「ウギャアアアーーー!」


 黒い猿は消滅した。

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