第一話「浪人の・・・・・・」 中編

 さて、訳のわからん展開となったが浪人は弥助と共に金貸しのところに向かっていった。


「しかし本当に妖の類を斬れるのか、拙者の刀は?」


「お侍様、急ぎましょう」

「あ、ああ、手遅れにならないうちにな」


 そして金貸しの家へ来た二人は中へ駆け込んだ。

「おうなんでえ、弥助じゃねえか。金持ってきたか?」

 金貸しが家の奥から出てきて言った。

「てめえ、よくもおなつを!」

「・・・・・・何の話だ?」


「とぼけるな!」


「んな事言われても、知らねえもんは知らねえなあ」


「そうか。これでもしらを切るつもりか?」

 浪人は刀を抜き金貸しに切っ先を向ける。


「本当の事を言わないなら、斬る」

「うっ……わ、わかったよ」

 金貸しは怯えながら答えた。


「おなつをどうしたんだ!?」

「おめえの女房は瑠死符亜団るしふぁだんという奴らに引き渡した」


「なんだそやつらは?」


「さあな、奴らは女をどこの奴隷商人よりも高く買ってくれるんでな。いい客だぜ」

「そやつらはどこにいる?」

「どこにいるかなんて知らねえな。いつも町外れの廃寺で取引するんだがな、ぱっと来てぱっといなくなるからなあ」

 どうやら本当に知らないようだ。


「ほう、それで次の取引はいつだ?」


「今夜だよ。これから別の女を攫って来てそのまま行くつもりだった」

「本当だろうな?」


「ああ、嘘じゃねえよ・・・・・・さて、もういいか?」


「いや、許さん」

「ぐはあ!?」

 金貸しは浪人にいきなり斬られて倒れた。


「安心しろ、峰打ちだ」


「え、斬らねえんですか?」


「こんな奴を斬っても刀が汚れるだけだ。まあ、簀巻きにしてその辺に捨てておこう、後は知らん」

 そう言って浪人と弥助は金貸しを適当な場所に捨てた。


 余談だがこの金貸しはその後、腹を空かせていた狼達に美味しくいただかれた。

 かと思ったら、その狼達は腹を壊して死んでしまった……。




「さて、町外れの廃寺とか言ってたな」

「どうしますか?」

「そこで瑠死符亜団の奴らを待ち伏せして、一人でも捕らえて居場所を吐かせるか」




 そして夜、廃寺で待ち伏せしていた浪人と弥助は

「・・・・・・まだ来ませんね」


「正確な刻限を聞いておけばよかったな、む?」

「どうしました?」

「シッ」

 いつの間にか寺の前に一人のいかにも怪しい男が立っていた。


「あいつですかね?」

「そうだろうな、全然気配を感じなかった」

「どうやら一人のようですね」

「油断は禁物だ、どのような相手かわからん。よし、拙者が出るのでここで待っててくれ」

「お気をつけて」

 浪人は男に近寄っていった。


「む、誰だ!?」


「拙者はいつもの方の代理です」

「嘘つけ、あんなのの代理になる奴などいるか! 怪しい奴め死ね!」

 そう言って男は斬りかかってきた。


「いきなりかー!」

 そう叫びながら攻撃をかわし、刀を抜いて男を斬った。


「あ、しまった。生け捕りにして居場所を吐かせるつもりが・・・・・・ん?」

 見ると斬られた男の傷口から何やら黒い霧のようなものが吹き出てきた。


「フハハハ・・・・・・なかなかやるな、面白い、俺も本気を出そう」

 霧のようなものは人の形になると、そう喋りだした。


「な? この妖かしの者がとり憑いていたのか?」


「そうだ。俺は妖魔、闇より生まれし者。刀では斬れんぞ!」

 そう言って妖魔は浪人に向かって来た。


「はっ!」

 浪人は刀で妖魔を斬った。

「フハハ、斬れんと言って・・・・・・ぐああああああー!?」

 妖魔は断末魔の叫びをあげて消滅した。


「本当に斬れるとは。しかし危なかったとは言えこれでは奴らの居場所が」

「お侍様」

「おお弥助、出てきてたか」

「そっちの男、まだ息があります」

「なんと? おい、しっかりしろ!」


「う、う」


「おい、瑠死符亜団の居場所は?」

「う・・・・・・この寺の下、井戸・・・・・・うっ」

 男は事切れた。


「寺の下? 井戸?」

「お侍様。そこに井戸がありますが、もしかしたら」

「そこが出入口かも」

「行ってみましょう」

「ああ」


 こうして二人は井戸に入り下へ降りて行った。

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