ショートショート「終末の恋人たち」
青い空を切り裂いて、夥しいミサイルが飛んでくる。
もう僕らは、いや、この国はおしまいだ。
でも、悪くはない。僕には愛する彼女がいるから。
争いとは無縁の穏やかな時間の中で、 最期を迎えられるから。
「あと5、6分で着弾ってとこかな」
「……それで全部、おしまいなのね」
「さっきのニュース見たかい。皆様、どうか後悔のないように、ってさ」
「ずいぶん勝手ね」
「でも僕らは幸せ者だよ。最期の瞬間まで、二人でいられるんだから」
「……ねえ」
「ん?どうした」
「別れてほしいの」
「……え?」
「別れてほしい。わたしもう、あなたのこと好きじゃないの」
「……なんで、今、言うの」
「やっと決心がついたの。ここで言わないと、わたし一生後悔する!」
「もう死ぬんだよ君も僕も!ねえ何を言い出したの急に!」
「あなたと住んで五年、五年間わたし、ずっと絶えてきたのよ」
「じゃああと五分だけ耐えてくれよ!このタイミングはおかしいだろ」
「あと五分あと五分って、あなたいつもそうじゃないの!」
「うわあ核ミサイルより厄介なスイッチ押した」
「いつも自分のことばっかり考えて、昔っからなにも変わらないじゃない。 あの時だってそう、3年前の秋。まず、私が手編みのセーターを編むために、毛糸を買いに行こうと思い立って、実家の母に」
「そのエピソード長いだろ!やめろよ!」
「最後までしゃべらせてよ!」
「最後までしゃべれないんだよ尺的に!頼むよ撤回してくれよ」
「できないわよ………だって」
「だって?」
「私ね……………実は」
「間をとるな!無駄遣いすんな!」
「え、えっとその、まず3年前から浮気してるのね」
「うわっサラリと最悪の単語」
「お腹にその、赤ちゃんがいるのね」
「畳みかけるね」
「で、あなた無職のクズ野郎じゃない、たぶんこの先も」
「あっはっは、君にも僕にもこの先はないけどね」
「だから別れたいの。私だけじゃなく、この子の明るい未来のために」
「無いよ!スタート前に棄権だよ残念ながら!」
「やってみなきゃわからないじゃないの!」
「何のやる気なんだよ!」
「あなたとは違ってね、私と彼とこの子には、可能性があるのよ!」
「無いよ!」
「あるわよ!」
「クソッ結局争いの中で死ぬのか!無いっつってるだろ!」
「あるっていってるじゃないの!なんでわかるのよ!」
「なんで分からないんだよ!いいか、もう誰にも可能性と時間は残って無
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