第4章第1節:セキレイ


   A


「やっぱ、ワイはイケメンやな」

(そんなにイケメンじゃないと思うけど……)

 自称・イケメンの池内が、不思議なポーズをしている。自分ではカッコイイと思っているのだろうが、あまりカッコイイポーズではない。

 飯島は打ち合わせ(という名のAV鑑賞)に行ったが、池内は打ち合わせ室に残っていた。


   B


「ところで、神田センセ」

「何です?」

「イザナギとイザナミっちゅう神がおったやろ?」

「『古事記』と『日本書紀』では、イザナキと読むのが正しいそうだよ」

「お、そうやったんか」

「イザナキとイザナミが、どうかしましたか?」

「その2人が子作りする時、何かの鳥の交尾を食い入るように見てたっちゅう話を聞いた気がすんねん」

「その話なら、私も聞いたような気がするね。『食い入るように』とは聞いていないけれども」

「『日本書紀』にある話のことでしょうね」

 本文ではなく、異文(異伝)の方だ。『日本書紀』には、多くのパターンが収録されている。

 ※第1章第1節参照

「イザナキとイザナミが子作りをしようとしたが、その方法がわからなかった……。そういう話があるんです」

「その時に、鳥の交尾を見たんやな」

「交尾とは書いてませんね」

「交尾やないんか」

「セキレイが首と尻尾を動かしたんですけど……。それを見て、エッチの方法を知ったことになっています」

「性交に成功やな」

「え、ええ……」

「そう言えばそう言えば、セキレイは尻尾を上下に動かすらしいね」

「尻尾を上下に? それを見てセックスに繋がるとは、大した発想力やな」

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