71区 テスト結果
高校選手権の後に帰って来た定期テストの結果。中身を見た時に、私は思わずガッツポーズをしそうになる。前回に比べて大幅に結果が向上しのだ。
「うそ? 聖香が156位? なんでいきなり40番近く上がってるのよ? あたしは10番下がったのに!」
「おぉ~。せいちゃん、やれば出来る子なんだよぉ~」
私の結果を聞き、麻子はショックを隠しきれず、紗耶は自分のことのように喜ぶ。今回の成績アップの理由はただひとつ。人生の目標が出来た。それだけだった。
永野先生のように高校教師になって陸上部を指導したい。そのためにはまず、教員免許が必要だ。となると大学に行く必要があるし、学力も向上させなければならない。そう考え、永野先生が出場した都大路のDVDを見て以来、コツコツと勉強を始めていたのだ。
そしてひとつ気付いた。どうも私は化学と生物がそれなりに得意だということに。人に教えようと思ったら、まず自分がよく知っておかなければならない。そう考えると、教員になるとしたら理科教師ということになるのだろうか。
別にそこまで永野先生と同じになる必要もないのだが、こればっかりは本当に偶然だった。間違っても、苦手な社会の先生が務まるとは思えないし。
目標を持つということが、ここまで人間を成長させるとは思ってもみなかった。確かに晴美や紗耶に比べればまだまだの成績だが、自分の中では今回の順位に結構満足していた。もちろん、これからもまだまだ頑張って行くつもりではあるが。
テストが返ってきた一週間後。私達はナイター陸上参加のため、先日高校選手権を行った陸上競場へまたしてもやって来た。
ちなみに、この陸上競技場は県の中心部にあり、山口県で一番大きな陸上競技場でもあるため、高校総体、高校駅伝、中学選手権と様々な大会が行われる。数年前には国体の会場にもなったらしい。
会場に着きプログラムを見た瞬間、葵先輩が珍しく永野先生に猛抗議を始める。
「綾子先生、これはさすがに無謀以外のなにものでもないですよ!」
葵先輩の言葉でプログラムを見た紗耶にいたっては、ショックで意識が遠のきそうになっている。「速い選手に付いて行けば記録も出やすいし、良い練習にもなる」と言う永野先生の持論と言うか屁理屈の元、桂水高校女子駅伝部全員が最終組に入れられていたのだ。
最終組には他県の都大路出場校、実業団選手、大学生とそうそうたるメンバーがエントリーしていた。唯一の救いは城華大附属がこの記録会に参加していないことだろうか。
てっきり城華大附属が出場すると思っていた永野先生は、その事実を知ってがっくりとしていたが、正直私は安堵する。
城華大附属で一番速い宮本さんと駅伝前に対戦してみたかったという気持ちも少しはあるが、それ以前に藍葉と対戦しなくて済んだという安心感の方が大きかった。
藍葉に負けるとは思わないが、高校生になってからの藍葉の走りを見る限り、間違いが起こる可能性が全くないわけでもない。もしも藍葉に負けた日には、一体何を言われることか。
ちなみに、久美子先輩と紗耶も城華大附属がいないことに安堵していた。
唯一麻子だけは、「ちぇ、力試しをしてみたかたのにな」っと悔しがっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます