第68話 魔都に漂う者 王城に吹く風
魔都王城王の間
深夜にも関わらず現在王の間は騒然としていた、玉座に鎮座しているシューベルトは静かに取り巻き達の言葉を聞いていた、その中から文官の一人がシューベルトの前に進み出る、玉座の前のひな壇で立ち止まって一礼をする。
「面を上げろ」
シューベルトは歩み出て来た文官が形式的な挨拶を始めようとすることを早々に切り上げさせて事を急がせる。
「報告します」
「・・・話せ」
「は、マリア王女の寝室はもぬけの殻になっておりましたので捜索をしたところ城内の抜け道を使用した痕跡が発見されました、抜け道を捜索の為にふた班を動員して抜け道からと出口に先行させました、その際に出口周辺の林の中から最近活動が活発になっている邪教の暗部らしい者達の遺体を発見しました、使用された武器と手際が二種類から単独もしくは二人で制圧した模様です、周辺を捜索いたしましたがマリア王女の発見には至っておりません、抜け道の使用と暗部の制圧を行った人物を同行していると考えられます」
「その人物に目星は付いているのか?」
「は、あの抜け道は使用されたことは数度しか無く我々の中でも存在をを知っている者は少なく、その上に暗部を制圧出来る力量もしくは武力を持つ人物は現在この魔都内に四名になりますが二名は除外出来ます、調査結果も出ておりその二名が有力です」
シューベルトは静かに頷いて人物の名前を告げる様に促す、文官は少し躊躇しながら人物の名前を言った。
「・・・ウェーバー丞相とショパン男爵の二名になります」
「・・誠であるか!?」
「事案が発生しましたので王城に招集を掛けようと屋敷に使いを出しましたが、この時にはすでにこの両名の屋敷はもぬけの殻になっており今回の事件に関わりがあるかと捜査いたしまいした、その際に両名の屋敷より物証が出てきました」
「両名ともか?」
「は、今回の事案に関する資料や抜け道の簡易図などが二名の屋敷が出て来てます、がどちらが実行したのかは判明しておりません」
「よろしい、では両名ともを」
「父上」
シューベルトが話しを遮るように王の間に入ってくる人物がいた、遮った人物は王の間には相応しくなく格好していた、全身をフルプレートの鎧に身を包み玉座方に歩を進めている、周辺にいる文官達はこの不敬な行為を誰も咎める者が居ない。
「・・・その格好はどうしたケラー?」
「その命令を私めに」
「「ケラー様お待ちください」」
王の間に駆け込んでくる二名がケラーの側に駆け寄る、シューベルトに礼をしようとするのをシューベルトは手で制して駆け込んだ二人に用件を促す。
「は、ケラー様がどこからともなく今回の事を耳に入れ、発生した事案を鑑みて王族のケラー様が指揮を執ると言われ初めてここに至ります」
「父上、人族の王族であるマリア王女の行方が不明になったのにもかかわらず、魔族の王族が動かなければ今後遺恨を残す事になります、危険なことは承知しております、しかしここで対応をしなければ戦争に発展する恐れがあります、故に私が指揮を執り無事にマリア王女の身を救い出して参りますのでお願いいたします」
「う~む」
シューベルトは手を額にあてがい考えを巡らせる、考えが纏まってケラーを見て言い放つ
「マリア王女無事は勿論、ケラー、其方も無事に戻ってくることを口約出来るか?」
「はい、天地神明に誓います」
「・・・良かろうショパン及びウェーバーの捕縛の任を授ける、行け」
「は・・・・・・出るぞ馬を引け出られる者は先行せよ」
ケラーは旋風が如く王の間を去っていく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます