第73話 サーカス団の一員

歩いてると日が暮れたので野宿の準備をする。

「まだ、一日目……こんなんで本当に次の目的地に着くのかしら?」

「諦めなければ着きますよ。そうだ、走って行きましょうか?」

一人で行ってくれ。


「転移できる魔法を覚えられればいいんだがな。」

「確かに、あると便利である。」

だが、俺は魔法を食らわないと覚えられないしな。

通常の方法で覚えるとSPがもったいない気がする。何せ上限がありそうだしな。


「まぁ文句言ってても仕方ありませんね。明日、また頑張って歩きましょう。」

「それしかないわね。」

そうして一日目が終わった。


次の日の朝。

「ふあ~よく寝た~。」

「おはようございます。」

「それにしても本当にサーシャ懐いてるわよね。」

サーシャは俺にしがみついて寝ている。

「サーシャちゃんも今まで一人だったのが寂しかったんじゃないでしょうか?」

「そうね。」


そうして朝の準備をしているとサーシャも起きた。

「おはようである……」

「顔を洗ってこい。」

「ふぁい……」

「なんか、本当の親子みたいな感じじゃない。いいわね~。」

「うるさい。」


ちゃっちゃと準備を済ませて出発する。

「よし、行きましょう!」

「お~!」

「今度は何もないといいがな。」

「そこの御仁達。」

言った側からこれだ。


「誰だ?」

「こっちだよこっち。」

誰もいない?

「下だよ。足元。」


言われて足元を見る。

「やあ。」

……イタチ?


「という訳でね。」

「なるほど、サーカス団の馬車から落ちたんですか。」

「で、落ちた時に気絶して、今どこにいるかも分からないと。」

「そういう事。」

「勇者殿!連れて行きましょうよ!」

耳元で大声を出すな、うるさい。


「連れて行ったところでメリットはないな。」

「そんな事言わずに!」

「あなた達はどこに向かってるんだい?」

「六魔が統治しているという町までだな。」

「多分そこに向かうまでの途中でキャンプをして、客を集めているはずだから、

頼むよ。礼ならするからさ。」

「勇者殿!!」

脳筋の声がさらに大きくなる。


「……キャンプまでだからな。」

「あぁ構わないよ。ありがとう。」

道で困ってるヤツに会ったら拾わなきゃいけない宿命なのか……


イタチを俺の肩に乗せて、道なりに歩く。

「名前は何て言うである?」

「リディアル・ウィック・エスタード五世だよ。」

ずいぶんと格好いい名前だな。


「リディアルなら自分で歩いた方が速いのでは?」

「そうしたいんだけどね、馬車から落ちた時に足をくじいてしまって。」

前足に巻いた包帯を見せる。


「だけど馬車から落ちた時に誰も気付かなかったの?」

「みんな公演が終わって疲れて眠っていたんだよ。」

馬車の速さは徒歩とそう変わらないんだよな?

で、俺達が道を歩いていた時に抜かされた事はない。

「少なくとも一日以上は放ったらかしにされてるって事か。」

「お恥ずかしながらね。」


「あんたを探してる人達がいるんじゃないの?」

「う~ん、探してくれてはいると思うんだけど……」

急に口が重くなったな?

「何かあるのか?」

「今は忙しくてね。そこまで手が回るかどうか分からないね。」

どういう事だ?


疑問に思った瞬間、辺りが暗くなった。

空を見ると分厚く黒い雲が凄い勢いで広がっていた。

何だ?

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