第17話 次の町まで

日用品や食料は道具袋に入れて持った。

貰った本や剣も忘れていないな、よし大丈夫だ。

それじゃあ

「では早速出発しましょう!」

なぜお前がここにいる。



脳筋が後から馬を引っ張りながら付いてくる。

「ほら、あれじゃないですか。私を勇者殿のお付きにと大臣が

言っていたではありませんか。」

そんなこともあったような。

「別にいらん。放っとけ。」


せっかくの自由な旅を邪魔されたくないんだが。

「それに仮にも騎士だろ、自分の騎士団に帰ったらどうだ?」

「えぇっとその…帰りたくないというか…」

顔が少し青ざめてきた。

「? そういえばお前の所属はどこなんだ?」


「…第5騎士団です。」

うわぁ…

「違うんですよ、なんかその、ガナガ団長は入団した時に

”一目見て気に入った。俺の物だな”っていって本当は

第4騎士団配属だったんですが、無理やりというかその、ねぇ…?」

俺に言うなよ。


「で、勇者殿とお会いするまで熱烈なプロポーズを受けてて。」

「あれでも雰囲気とか話し方から察するに、いいとこの出なんだろ?

玉の輿だったんじゃないか?」

「私は騎士ですから、そういうことに興味はありません。

それにその、もしお付き合いする日が来ても、せめて相手くらいは

自分の好きな方のほうがいいですし。」


あのボンボンも知らないところで振られてるとは思うまい。

「ですので、勇者殿のお付きで旅して回ってたいなと。

もちろん必要なことは何でも申し付けて頂いて結構です。」

「…はぁ、邪魔はするなよ?」

「もちろんです!」


しょうがない。

ペットのチンパンジーでも連れていると思え ――敵か!?


草むらから水色で半透明の物体が2匹ほど動きながら近寄ってきた。

「勇者殿!逃げましょう、スライムです!」

「どうした?」

「スライムは物理攻撃が効きにくく、体は強い酸になっています!

下手に怪我するくら」


パァン!!!!


いい音が鳴ったな。

剣は使えないが野球ならやったことある。ホームランってところだ。


「さてと…」

ステータス画面は


スライム Lv10

HP:223  MP:0  ATK:42  DEF:47

INT:5  MGR:33  DEX:25  LUC:10

スキル

【軟体】【溶解】


城の兵士の一般的なLvが11~13だった事を考えると確かに強敵か。

それでもさすがに能力差がありすぎる。


「ちょうどいい、魔法を使ってみるか。」


水魔法で…あまり威力が強くない…攻撃魔法…

呪文が思い浮かんだ。


「水よ。深き生命の源よ。我が前に立ちふさがりし愚かな魂を

貫き滅ぼしたまえ…

アイススピアー!」


下から氷が出てきて敵を串刺しにする魔法か。

魔法は問題ないんだ。問題なのは、


「…10階建てのビルと同じくらいかな?」


ぶっとい氷の柱が20本程度そびえ立っていた。


「勇者殿…魔法も使えたんですね…」

感情が入ってない声が聞こえる。相当驚いたらしい。

俺もだ。

「まさか、こんな事になるとは…さっさと逃げるぞ。」

「え?」

聞いてなかったのかコイツは?


「逃げるといったんだ。」

「でも敵はほら、見ての通り勇者殿が倒しましたよ?」

俺は後ろを指差す。

「多少は離れてるが、それでもまだ近い。下手すりゃ大騒ぎだ。」

脳筋もそれで気付いたらしい。

首都の近くで、こんなデカイ氷のオブジェができたら

犯人探しが始まるんだろうな。


「勇者殿、馬に乗って行きましょう!」

「俺は馬に乗れないし、目的地もまだ決まってない!」

くそっ!こんな事なら剣で倒しとくんだった!

「道なりにしばらく行くと町があります、そこを目指しましょう!

馬は私が操りますから後ろへ!」


「…やむを得ないか!」

俺は脳筋の後ろに飛び乗る。

「しっかり掴まっていて下さい!ハッ!」



俺は逃げながら2つのことを考えていた。

1つ目、魔法を使う場合は緊急時以外は最弱のものを使う事。

2つ目、レベルアップしたからSPが入った。

    呪文を詠唱しなくて済むスキルがないか探そう。恥ずかしすぎる。

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