第8話 ウォーター

ヘレンケラーが初めて、ちゃんと言葉を理解した「ウォーター」という場面を知っていますか?

あれは、奇跡の人の戯曲の創作らしいけれど、あのシーンは、知る前と知った後とが決定的に、心や物事の捉え方が変わる事というのがとても良く表されていると思う。


そこで私は、人が本当にちゃんと人生を考え向かおうとした時このヘレンケラーのウォーターと同じ感じなのでは無いかと思い、


人生哲学を考えてる人

自分の考えと常に向き合っている人

情愛を知った人


などを「ウォーター経験者」と勝手に呼んでいる。


数年前に、某チャンネルの番組で中村うさぎさん、マツコ・デラックスさん、若林史江さんの対談があった。

この時の話で忘れる事が出来ないのは、若林さんが「小さな悩みなんてグランドキャニオンのような風景を見れば何か変わるかもよ」

というような事を言ったのに対して

うさぎさんが「大きなものと比べて、悩みが小さいと言ってる人は本当に小さな悩みしか無いのよ。じゃあグランドキャニオンの傍に住んでる奴らは皆悩みが無いのかよ」

というような事を言って聞いていて胸がスッとした、という事があった。

あの当時、私は若林さんの事を知らなかった。

けれど現在、五時に夢中が大好きな私はもちろん若林さんを知っている。

なのに、若林さんが「あの時」の女性だとは気づいていなかったのだ。

それは、今の若林さんは「ウォーター経験者」に見えるから。

つまり、もう今の彼女は軽々しく

「壮大な景色を見れば、心があらわれて悩みなんて吹き飛ぶ」

というような発言をしないだろうと思えたのだ。


先日、番組中に若林さんが「あの番組」での対談で、うさぎさんに言われた事を話して、え?あの時「グランドキャニオン」発言は若林さんだったの?と初めて知った。

あの番組から何十年も経っているわけじゃ無い。

ほんの数年だ。

その間に、きっと若林さんは色んな事があったんだと思う。

画面を通じてですら、あの当時の女性と明らかに発する言葉も見た目も違う。

やはり、ヘレンケラーがウォーターの言葉を理解したように、何かを知ったのかなと思った。




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