56歳。フリーター。

「クレーム対応のバイトなんか、やってられるかよ!」

 と、同僚の若いバイトがいつものように、愚痴をこぼし始めた。私は、とある企業のカスタマーセンターのお客様対応部門、で働いている。

「いやでも。不景気な中で、働く場所があるだけでも良いんじゃないですか?」

 私は、やんわりといなす。


「そりゃ、おじさんはいいかも知んないけどさぁ。俺らみたいな若者にとっては退屈だし、面倒だし・・・」と、“おじさんは他に仕事が無いからしょうがないだろうが、我々には豊富に仕事があるのだ”と言外に匂わせながら、不満を語ってくる。


 ただ。それは既に矛盾を生じている。確かに、56歳の私と比べれば、若者の方が新しい仕事に挑戦するチャンスは恵まれていることは確かだ。しかし。であれば。そうすればいいのだ。「こんなバイト」と愚痴を吐く暇があるなら、新天地に羽ばたき、新たな道へと進めば良い。だがやらない。


 私にとって、この職場は楽園のようなものだ。人が持っているネガティブ思考や、具体的に“何を望んでいるのか?”というクレームを聞きながら、新たなビジネスチャンスを捉えることにもなる。日々が楽しい。


 まあ、株式投資の配当金が一般的な会社員の2倍程度は、寝ていても入ってくるという要因もあるかも知れないが。

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