犬口のコロコニ
お尻に挿さった尻尾を左右に振りながら大通りを四つ足で歩く。道行く人々はこの気持ち悪い光景に顔を
要は脳みそが暇なのだ。ルーチンワークのように繰り返されるお散歩。頭を使わなくても身体が勝手に仕事をしているから、楽といえば楽だけれど、こうも脳みそが暇をしているとどうでもいいことばかり考えてしまう。
「ほら、コロちゃん、鳴きなさい」
「わん!わん!」
首輪をぐんと引かれ、尻尾を大きく揺らすと、飼い主は満足げに頷いてクッキーを床に放った。綺麗に二つに割れてしまった。
クッキーは好きだ。この世で一番美味しいと思う。チョコが塗ってあれば最高だ。グラハムのぷちぷちしたクッキーにバニラクリームがはさがってるのも捨てがたい。でも、クッキーを食べていると飼い主が下半身側に回るのはいただけない。私は真面目にクッキーを味わっているのだ。美味しいものを食べてる最中にちょっかいかけるだなんて、飼い主のくせに躾が悪いなあ、なんて、思いながらも……。
「わん、あん、あぁん」
とっても気持ちいい!急いでクッキーを食べて、お尻を高く上げると、飼い主は尻尾をぐにぐにと、抜こうとしては手を離して、穴のひだひだが広がっては戻って、ひだひだの裏側の、なんだか押されるときゅんとなるとこが、ああもうたまらなくて、コンクリートにほっぺたをおしつけたら、クッキーのかすがまだちょっとおちていて、ふわりとかすかにばたーのにおいがして、あまくて、おいしくてきもちいくてとろとろに、なってたら、いきなしにしっぽを容赦なく引き抜かれて、ああもう、ああもう。
「ひぃん、だめ、やだやだぁ……」
ずちゅ、ねちゃ、ぷりゅりゅ、と音がして、あーあ、足ががくがくと震えて、おもらしするほど気持ち良くなって、クッキーの香りもさくさくの音も台無しにしてしまった。
「あっ、あぁ、ふぅう、んんん……」
うわっ、とかオエェ、とか聞こえる中ですっきりした私は、汚れた穴にまた大きな尻尾をずくりと突き刺されて、飼い主とお散歩を続けたのだった。そうだ、仕事が終わったらクッキーを買おう。フンは誰かが片付けた。
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