実験・マウス&フラワー
翌日、放課後。
俺が科学室に入るとすでに彼女がいた。
「今日は散策しなくていいのか?」
「朝のうちに周りました」
「そうか」
俺は鞄からケースを取り出す。
「それ、何ですか?」
「俺のペットだ」
「わあ、見せてください!」
「言われんでも見せる」
お前の為に連れてきたんだからな
俺はケースの蓋を開けて彼女の方に向ける。
「は、ネズミですか」
「苦手か?」
「たぶん……」
「全く、誰もこの可愛さを理解しないな」
大学のやつに見せても皆言う。
「実験に使う鼠を飼うのはな……」と。
まあ、それはいい。
鼠をケースから出して彼女の方に突き出す。
「苦手かもしれないが……指先でいい、少し触ってみてくれ」
「いいですけど……好きにはならないと思いますよ」
「別にいいから」
元々それは目的じゃない。
彼女は恐る恐る鼠に指を伸ばす。
「……あれ?」
彼女の指はネズミの頭をすり抜けた。ネズミが寒そうにぶるりと震える。
「触れませんね」
「うむ……やはりか」
俺は教授が飾ってある花を取って彼女に突き出す。
「触ってみろ」
「え? はい」
彼女が花に手を伸ばす。
「あ、触れました!」
彼女は花を持って嬉しそうにする。
「なるほど……仮説通りだな」
俺はレポート用紙に記録する。
『生命のあるモノには触れない。 命を無くしたモノには触れる事が出来る』
『体温は低く、人間だけでなく他の生物も感じる』
少し考えて追記
『なお、生命の無いモノを間に挟めば擬似的に生命のあるモノに触れる事も可能』
「……こんなところか」
呟いてペンを置くと彼女が何か思い出したようで、俺に顔を近づけて切り出した
「そういえば昨日のは何の意味があったんですか?」
「昨日? 何の事だ」
「スマホを私に向けて微弱だとかなんとか……」
「ああ……」
俺とした事が忘れていた。その実験は終わっていなかった。
「それも実験の一つだ、また明日行う」
「じゃあ、明日もここで待っていますね!」
彼女の笑顔に、胸の辺りがチクリとした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます