第161話 土葬

 私の実家がある地域は、昔から死者は土葬する風習でした。最近は火葬を選択する人が増えましたが、今でも土葬を選ぶ人もいます。


 嘘だあ、日本じゃ土葬は法律で禁止されているだろ、とおっしゃる方がおられると思いますが。文化的に認められているところもあるのです。


 なんでしょうかね、私の住んでる地域の土葬の方法や儀式などが、日本とは違い、なんと古代百済のと似ているんですって。

 大学の先生が調査に来られたこともあったのですが。

 どうやら、私が生まれた地域はかつて渡来人たちの里だったようです。

 大陸から招待されてきた刀鍛冶や陶器の職人が、私の先祖かもしれないと思うと、ちょっとロマンを感じます。


 土葬に話を戻しますね。


 身体を埋める山、というのがありまして。

 年齢に応じて埋める場所が違います。

 若年者は山のふもと、高齢者ほど頂上に。

 長年埋めまくってきたわけですから、穴ボコだらけ。

 一度、母はまだ埋葬して日の浅い穴に踏み込み、はまってしまったことがあったそうです。

 ご想像どおり、ぐちゃぐちゃのスプラッタ。今でも強烈な思い出だと、母は申しております。


 そんなものですから、ここでは人魂がよく出るとも言われておりました。

 ……まあ、八ツ墓村みたいな処だと、思ってくださってよろしいかと。


 こんな田舎出身の私が、関東に出た際、同じように土葬の風習がある地域出身だという方に出くわしました。

 そんな方にお会いするのは初めてでしたので、いろいろとお話をお伺いしました。


 その方は栃木県出身。

 私のところとはまた、違った土葬方法のようです。


 隣近所同士で、誰か亡くなった際には埋葬するための穴を共に掘る、という絆を結ぶのですって。


 その関係をなんと呼ぶかというと。


『穴兄弟、ていうの』





 ……一瞬、別の意味の兄弟を思い浮かべたのは、私だけじゃありませんよね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る