第501話
大きな力には大きな反動が伴うものだ。
実際初めてその力に目覚めた時、覚醒後の反動で彼女は気絶し眠ってしまっていた。
それが古き炎の神イファートの暴走にも繋がった。
その事を思えば、長い旅の中で常に全力を出し続けることはできないはず。となれば、隙が生まれることは十分にありえることだろう。
あるいは単純に己の力をまだ扱え切れていない不安が彼女にはあるのやもしれない。
どちらにしろ確かな事は、ベルティーナには一人でゴルディアに向かう気がないということだ。
「経路は既に決定済みだ。お前一人の為にそれに変更を加えることはない」
レグスはゴルディアの街の位置を知らない。
広大な灰の地である。街が予定経路から大きく外れた位置に存在していてもおかしくはない。
当然もしそうであったのなら、そんなところに寄っている余裕など彼にありはしなかった。
「その点なら安心してちょうだい。ゴルディアがある場所はあなた達の組んだ経路からそうずれていないそうよ」
何故そんな事をベルティーナが言い切れるのか。それはマルフスから話を聞いたからに違いない。
詳細な経路まで話したわけでもないだろうが、それでも許可もなくその手の情報を漏らすなど言語道断な行いだった。
そもそも女の目的地が自分達の予定経路の近くにあるのは単なる偶然だといえるのだろうか。
経路の選定作業にはマルフスも関わっていた。彼の助言を受けて変更を加えた箇所もある。
ゴルディアの近くを通るように誘導されていたという可能性は十分に考えられる事だった。
偶然であったにしろそうでないにしろ、いい気はしない。
レグスの表情は自然と険しさを増す。
「たいした偶然だ、……だが答えは同じだ。俺達はゴルディアには向かわない」
「頑なね。……私が怖いの?」
女の挑発的な笑みにも男は動じず、毅然たる沈黙にてその意を示した。
「そう……。残念ね、あまりこういう手は使いたくなかったのだけれど……。取引しましょ、レグス・ロカ」
ベルティーナの瞳に宿る悪意がよりいっそうと強まる。
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