第486話

 翌日の事、小さな壁の民の預言者は件の娘と共にレグスの前へと再び姿を現した。

 光焔の女王、古き神々の召喚者ベルティーナ。

 彼が彼女を連れ現れた理由、それが昨日の論争と無関係ではないことは明らかだった。

「いったい何のつもりだ」

 目の前に立つ傲慢で利己的な魔術師の娘に一瞥をくれながらレグスはマルフスへと問うた。その冷ややかな口調には彼が感じている不愉快さというものが滲み出ていた。

「彼女には果たさねばならない使命がある。ご主人様の為に果たさねばならない使命が……、だからマルフスが説得した」

 星の意に興味など持たないはずの娘をどう言葉巧みに説得したかは知らないが、これは明確な違反行為である。その勝手な振る舞いをレグスが歓迎するはずもない。

「俺は必要ないと言ったはずだ」

「ご主人様はまだわかっていないから。自分が、炎の娘が、どれだけ大切な使命を背負っているか。だからマルフスがこうして……!!」

「何度も同じことを言わせるな。星の使命など知ったことではないし、この女の力を頼るつもりもない」

「ご主人様……!!」

 縋るように己を見る小男を無視して、レグスはベルティーナに言う。

「聞いての通りだ。具体的にどんな話をしたのかは知らないが、俺が許可してのことではない。この男から聞いた話は全てなかったことにしてくれ」

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