第418話

「何故だ星々よ!? あの方は我らの王ではなかったのか!!」

 レグスの敗北に動揺する壁の民達の中でもマルフスのそれは著しかった。

 星の声が告げし救世主の敗北に彼は混乱していた。

 怒れる炎の神を止めるのは、星が告げし者の役目ではなかったのか。

 この窮地をあの者以外の誰に救えるというのか。

 混乱と失意によってその場からマルフスが動けずにいると、周囲の壁の民達がイファートの様子がおかしな事に気付き、言う。

「どうした。いったい奴は何をしている……」

「何かを探している? まさかあの男を」

「あれだけの爆発だぞ。もはや生きてはいまい」

 彼らのやりとりに、動揺しほとんど固まっていたマルフスの思考が再び動き出す。

 あの爆発だ。通常ならばアレに巻き込まれて助かる者がそうそういるとは思えない。

 だが彼は特別だ。星に選ばれし者なのだ。

 一縷の望みはある。

 あの男は、まだ死んだとは決まっていない。

 であるならば、自分がすべき事はただ一つ。

 ようやく巡り会えた運命を絶やすわけにはいかない。

「お前達、いったい何をぼさっと見ている!!」

 声を荒げてマルフスは檄する。

「戦うのだ!! 戦って、我らの王をお救いするのだ!!」

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