第386話
『王権は神より与えられた不可侵にして絶対の権利である』。
そう主張する王家は大陸にも数多く存在するが、果たしてその中に本当に神より王権を授かった者がどれだけいる事だろう。
多くの王にとって王権神授の謳い文句など、己の権威を高め、自身を正当化する為の方便にすぎない。
聡い者は気がついている。
神と呼ばれるほどの存在が、長い歴史の中で見れば、雨後の筍のように生まれる一介の人の王の事などそうそう気にかけているわけがない事に。
されど、真に神より王権を授かる者もこの世の中にはたしかに存在する。
『光焔の女王』。
大神ファラより王権を与えられ、古の炎の王国を治めたフラーマ人もその一人だった。
炎の大神に選ばれし女王は偉大な恩寵を得て、絶大な力を有していたという。
大炎を自在に操る魔術、霊術。
一睨みするだけでその瞳を覗いた者を灰と化す炎の魔眼。
彼女の力は一軍にも優る強大な力だった
しかも古の王国の女王が持っていたのは、そういった人を殺むる力だけではない。
彼女にしか持ち得ない、もっとも際立った特性。それが女王をして偉大なる炎の女王たらしめたのだ。
それは神々の召喚者としての資格。
光焔の女王は『大地の太陽の眷属』と呼ばれる炎の神々を召喚する事が大神ファラより許されていた唯一の人間だった。
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