第293話
魔物の軍勢が用意した攻城兵器は攻城塔だけではなかった。
門街を圧し潰す岩の雨を降らせたあの投石機がこの城攻めにも使用されていたのだ。
「まったく限がないわ。このままではいずれ……」
愚痴るようにひとり言葉をこぼすトーリ。
彼は杖先より放つ雷撃で、飛来する大岩を次と次と穿ち破壊していたのだが、一人の魔術師の力だけでは投石攻撃の被害を完全に防ぐ事はできなかった。
稲妻に破壊された大岩の破片の一部は城内にも落下しており、少なからず犠牲者を出してしまっている。
このまま攻撃を受け続けてはいずれ大きな痛手を負う事になるだろう。
後手的な対応ではなく、根本的な対応、つまりは岩を飛ばしてきている兵器そのものを破壊する必要があった。
しかしそれは簡単な事ではない。
城外の魔物の海を割って突破するなど無謀すぎるし、かといって敵の投石兵器が配備されているのは魔法攻撃や弓の射程圏外である。
この厄介な投石攻撃に城を守る者達は頭を悩ませていた。
そうした共通の懸念に対し古き精霊のセセリナが思い立つ。
彼女は主塔を訪れると、そこに配備された巨大な弩砲を指しながら大男達に尋ねた。
「ちょっと、そのデカブツでなんとかならないの? あの投石機」
彼女の問い掛けに、弩砲を運用する壁の民達は困惑しながら答える。
「無茶だ、精霊様。いくらこいつでもあんなところまでは届かねぇ」
「絶対に?」
「ああ。もう少し近ければ何とか届いたかもしれねぇが……」
無念そうに口にする大男達とは対照的に、セセリナはにんまりと笑みを浮かべる。
「もう少し、ね」
彼女には何やら考えがあるらしかった。
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