第288話『血風夜』
太陽が沈み、夜が来る。
不穏な暗闇の中であっても、もとより夜目の利く壁の民に大仰な明かりは必要ない。
されど、今だ冬の寒さが色濃く残る壁の地の夜には、ゆらめく炎の温もりが必要であった。
暗夜の誘いに抵抗せんと城のあちらこちらで炎が灯され始め、籠城者達が武器を手に与えられた持ち場へとついていく。
レグス達の姿も当然そこにあった。
星光露の効力により、彼らの瞳もまた夜目が利いていた。
その瞳で、城外に集いに集った魔物の大軍を城壁より眺める彼らの耳に、闇夜の訪れに興奮する者共が口ずさむ呪わしき唄が聞こえてくる。
「何を唄ってやがるんだ」
魔物の言葉を理解できるはずもないファバの疑問に、青き精霊の少女が険しい口調で答える。
「深淵の支配者を讃える賛美歌よ。欲深き者達の穢れた唄」
セセリナが露骨に嫌悪するその邪悪な歌声の大きさが、城に立て篭もる人々の置かれた境遇の困難さをより鮮明にしていた。
そして忌まわしき魔物達の歌声が止むと、穢れの群れより何者かが姿を見せ、城の方へとやってきた。
それは従者を連れたダークエルフのようだった。
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