第244話

「見事なものだ」

 少女の術に感心しながらカムが言う。

「それで……、こちらのお嬢さんはいったい?」

 彼女の問い掛けに少女自身が答える。

「私はスティアのセセリナ。よろしくね、お嬢ちゃん」

 自分の事を『お嬢さん』と呼んだカムを『お嬢ちゃん』呼びするセセリナ。

 それは、たかが二十年少々生きているばかりの人間に、ずっと年上の自分が子供扱いされた事に対する、彼女なりのちょっとした意地悪のつもりだった。

「スティア?」

 聞きなれぬ言葉に難しい顔となるカムを見てレグスが言う。

「古い精霊の一種だ」

 驚く遊牧民の女に、セセリナは得意気な表情を浮かべながら言う。

「まぁこの子達の保護者ってところね」

「精霊が……、保護者?」

「ええ、だってレグスが赤ん坊の頃から私が世話してやってるんだから」

「おい!!」

 わざわざ偽名を名乗っていたのに勝手に本名を出したセセリナをファバが注意しようとするが……。

「レグス……、なるほど、偽名だったわけだ」

 既に手遅れだった。

「何よ別にいいじゃない。彼女は信頼出来るわよ。それに世話になっている相手に偽名で通しつづけるなんて失礼でしょ」

「よく言うぜ……」

 悪びれる様子が微塵もないセセリナに、少年が呆れ言った。

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