第185話
王の決定に、議員達から悲鳴や嘆きの声にも近い溜め息が漏れ聞こえる。
「だがな、ガァガよ。咎人に天意無き時、いらぬ混乱を招いたお前の責任も当然問わねばならぬ。己が首一つ、賭す覚悟はあろうな」
「はっ!! 無論の事でございます」
「いいだろう。闘士はいずれの者にするつもりだ」
「ブノーブをと」
「ほう、ブノーブか。その者は確か……」
「はい、この冬一番の戦果を上げた戦士であり、重兵団入りもすでに決まっております。もともとこの男が今回の刑の執行人となっていたうえに、本人の強い希望もあり、最適な人物かと」
「なるほど、文句あるまい……」
そしてしばらくの沈黙の後に王は再び口を開く。
「ガァガよ、我ら壁の民の新たな時代の勇者とならん男に天意がある事を、わしは願っておるよ」
王の言葉に深く深く頭を垂れ、ガァガは返答する。
「御意にござります」
決闘裁判でのブノーブの勝利はガァガの死を意味する。
そうであってなお、彼自身、そうなる事を望んでいた。
何故なら、それが口にするのも恐ろしきマルフスの予言が偽物である事の証明になるからだ。
「なんたる事を……。我が王よ、万が一にもブノーブが敗れる事あれば、民達の間に動揺が広がりましょう。これは決して老いた男の首一つで済む問題ではありませぬぞ」
ガァガが王座の間を去った後、元老院議員ベベブは嘆くように己の王へと訴えた。
そのような訴えに対して、王の答えは大変簡潔なものであった。
「で、あるならば、もとより壁の内に収まるだけの問題ではなかろうよ」
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