第133話

「ゴブリンまでもこの戦いに加わっていると言うのか……」

「ルル、重兵団の奴らを呼べ……。お前達で手に負える数ではない。はやくしないと……、手遅れにっ」

 激しく吐血するズズ。

「ズズ!! 大丈夫か!!」

「俺はもう駄目だ……。トカゲ共、毒まで使ってやがる……」

「もういい喋るな。すぐに聖来草を持ってきてやる」

「間に合わんさ……。それよりもはやく重兵団の奴らを……」

「ああ、わかってる。安心しろすぐに呼んで来る」

「そうか、よかった……、なぁ、ルル……」

「なんだ」

「俺は、俺は勇敢に戦ったんだ……」

「ああ」

「本当はこんな惨めな死に方でなく、戦って死ぬはずだったんだ……」

 誇り高い壁の民が涙を浮かべながら訴えかける。

「だけど、みんなやられちまったから……、仕方なく、仕方なく……」

「わかってる。わかってるとも。お前は誇り高い戦士だ。恐怖に屈するはずもない」

「ああ、そうだ……。俺は戦士だ……。奴らを二十匹は狩ってやった……。ルル、みんなに伝えてくれ、俺は勇敢だったって……。戦って死んだんだって……」

「わかってる。何も心配するな。お前の名は勇者の石碑に必ず刻まれる。誰がそれに反対などするものか」

「よかった。よかっ……」

 血を流しすぎたか、それとも毒のせいか。ズズが苦痛と安堵が混じった複雑な表情を浮かべながら息絶える。

「ズズ!! ズズ!! くそっ!! くそ共があああああああ!!」

 ルルは怒りで絶叫する。

 ズズが親しい友だったからではない。どちらかと言えば気に喰わない奴の内の一人だった。

 だが、それでも、誇り高い壁の民が涙を浮かべるその心情、戦いの民であるはずの彼が大量の魔物を目の前にしながらも、背を向けねばならなかったその屈辱。

 想像出来ぬはずがない。彼女とて同じ壁の民なのだから。

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