第64話

「そんな古いもんなのかこれ」

「最低でも二千年前から、この地にあった物だ」

 はるか古の遺跡、当時は汚れ一つなかったであろう白柱も、人々が踊ったという石台も、徐々に風化が進み、汚れ、ひび割れが目立ってしまっている。

 さりとてフェスタ・アウラの神秘的な美しさ全てが損なわれたわけではない。

 遺跡を眺めながらボルマンが口を開く。

「そしてその頃から、このフェスタ・アウラはこの地を守護してきた」

「守護?」

 ファバにはこの石の遺跡が村の守りにどう役立つかわからなかった。だがボルマンは言う。

「お前さんも感じるはずだ。フェスタ・アウラに宿る霊力を」

「霊力たって……、見てたらなんか変な感じはするけど、これが霊力ってやつなのか?」

「そうだ。このフェスタ・アウラには古き精霊達の力が宿っている。そしてその力は幾千年もの間、カラロス山の魔物達を寄せ付けぬ結界となった」

「これにそんなすげぇ力があるのか。……こんな田舎でどうやって魔物達から身を守ってるのかと思えばそんな秘密があったわけだ」

「だがそれももう長くないだろう……」

 ボルマンの表情が険しくなる。

「近年、急激にフェスタ・アウラの霊力が弱まっている。最近では村の近くまで魔物が姿を現すようになっての」

「おいおい、大丈夫かよ」

「大丈夫ではない。何か手を打たねば、このままではいずれ村は滅ぶ事になる」

「滅ぶって……」

「そこでだ、レグス殿」

 ボルマンがレグスに言う。

「お前さん達に頼みたい事がある」

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