『歯軋り』

歯軋りしながら 生きている


ままならない世の中に

ままならない他人に

そして

自分すら裏切る ままならない自分に


 上に諂い

 下を羨み

 隣の才能に嫉妬して

 そうして総てを自分と比べながら

 自信もプライドもない と

 真顔で言い張る自分を知っている


 認められたい

 誉められたい

 親しくしたいと思われたい と

 その場の他人目を気にするあまり

 言ったことすら忘れてしまう

 愚かな自分を知っている


だから必死に耐えている

世の中に向かいそうな憤り

他人から背けてしまう視線

自分に刺さるべきものに他ならない


いっそ 途方に暮れる息を止め

泳ぐ眼球を渾身の力で打ち付け

眉根を寄せ 鼻に皺を寄せ

瞬きを忘れて涙すら滲ませて


無様なのは百も承知

でも このままならない世界で

ままならない他人に囲まれ

ままならない自分を引きずり


 私は 次の息をしないわけにはいかない


だから

指が白くなるほど爪を握りしめ

奥歯が砕けるくらい力を込めて


歯軋りしながら 生きていく

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