猫  土地神に弟子入りする。

 一日も早く唯を俺の物にしないと、また下らない男に引っかかっちまう。

 強迫観念に駆られた俺は、連日スパルタな師匠の元で特訓を積んでいた。

 ああ、師匠ってのは、人間に変化へんげする方法を教えてくれた奴だ。ホントに偶然出会ったんだがな――。


 猫又になったばかりの俺は、ちっとも人間に変化出来なくて焦っていた。

 唯が寝静まってから近所の神社で自主トレを始めたが、頭に葉っぱを乗せろだとか、巻物を咥えろだとか、猫集会で得た情報は、どれもコレもあてにはならなかった。そんなある日の晩、

「ねぇ、なにやってんの?」

 と、ふいに子供に声をかけられた。

 思わず「うわッ」と叫んでしまったが、正体がバレてはマズいと思い、すかさず「にゃ、にゃあ~~」と猫のフリをした。

「遅い。バレバレ。つーか、二本足で踊ってんの見ちゃったし。ねぇ、こんな夜中にうちの庭でナニやってたのさ、猫又くん?」

 そのコンビニ袋を下げた銀髪の子供は、アイスを食いながら俺を睨んだ。

「す、すんません。すぐに帰りますんで……」

「だからナニしてたの? アタリが出なくて機嫌悪いから、さっさと言わないとアイスの棒、お前のケツにブチ込んじゃうよ?」

 ひぃッ! ガキはナチュラルに残酷だから恐ろしい。

「じ、じつは――」

 俺は一部始終を話した。聞き終えるとガキは、「大変だったんだねぇっ」と、泣きながら俺を撫で繰り回した。

「惚れた腫れたは得意分野さ! そういう事情なら、みんなボクに任せてよ!」

 聞けば、どう見ても中坊なコイツは、この辺りの土地神だという。

 気合だけは十分だが……アテになんのか、コイツ?

 俺は一抹の不安を覚えつつも、この『土地神・李斗りと』に入門し、一ヶ月間の変化短期集中コースを受講することと相なった。

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