第24話 DIYってなんですか? A.日曜大工です

 レンガを運び、台所の勝手口出た、すぐの場所に集める。


 雄一は、セメントを砂と混ぜながら、生活魔法の水を使って、モルタルを作っていく。


 ちなみにコンクリートとモルタルの違いは、砂利が入っているかどうかである。


 台所の勝手口の外側の傍で、レンガで囲いを作っていく。


 モルタルを接着剤替わりに使って、雄一の腰ぐらいの高さまで積み上げ、前方の部分だけあけた状態で、レンガの上に真っ平らな一枚物の石材を乗せる。


 ゆっくりモルタルが渇くのを待ちたいところだが、時間短縮を狙って、急ぎ固める為に水魔法でスチームを起こす。


 ガゥガゥ~!


 焦って一気にやると割れると思われるので、探り探りやりながら状況を見ていると、どうやら上手くいったようで結合に成功する。


 今度は、一枚物の岩の上に扇型のレンガを使ってアーチを作る。


 側面を普通のレンガで塞ぐようにして、モルタルをケーキの生クリームをスポンジに満遍なく塗るようして、カマクラのようになるように均していく。


 ガゥ!


 さっきと同じように水魔法を行使して、水抜きをして軽く叩いて固まってる手応えを感じた雄一に笑みが漏れる。


「これで、生活魔法の火を使えば、オーブンとして使えるぞ。生活魔法で上手くいかなかったら、素直に火を焚いてやってみるか」


 ガゥッ、ガゥガゥ!!


 先程から後ろから聞こえてくるミュウの声を無視しながら、お父さんの日曜大工をするように勤しんでいたが、さすがに無視するのは無理があるかと、諦める。


 振り返って、雄一の後ろで遊んでる? 2人に声をかけることにした。


「なぁ、アリアとミュウ、さっきから何やってんだ?」


 やっている事は分かるが、どうしてこうなってるか分からない。


 雄一は、ここに来てアリアが追い付いてきてから、ずっとミュウと力比べをする2人を見つめる。


「ミュウ、楽しい。コイツが遊んでくれる!」


 嬉しそうにガゥ、と鳴くと、先程から何度となく繰り返される。


 そして、アリアがミュウに転ばされるという絵がそこにあった。


 アリアは口をへの字にして、再び、挑みかかるという根性がある姿に雄一の胸を打つものはあるが、何があそこまでアリアを奮い立たせているのかが分からない。


 ミュウは、嬉しそうに小さい耳をピクピクさせ、お尻の辺りの腰蓑も揺れる。


 それを見た雄一は、ミュウに尻尾があるようだと認識するが、腰蓑に隠れるぐらいだから、かなり可愛らしいサイズの尻尾のようだ。


 アリアは、嬉しそうにするミュウと力比べをしながら、ピクピク動く耳に目を奪われる。


 力比べをしてた手を離すと、ミュウの頭をナデナデし出す。


 すると、撫で方が上手いのか、ミュウが、ガゥ~と気持ち良さそうな声を出して頭を差し出してくる。


 差し出された頭をアリアは、ヒシッという擬音が聞こえそうな抱き方をすると、ミュウもアリアの胴を抱き締める。


 どうやら、なんらかの友情めいたものが芽生えたようだが、雄一にはさっぱり分からなかった。


 まあ、友達になれたのだろうと、適当に解釈した雄一は、


「アリア、ミュウ。これから、ここで夕飯の準備するから、危ないから他所で遊んでくれるか?」


 2人を片手づつ使って抱き抱えながら言うと、アリアはコックンと頷き、ミュウは、ガゥ! とちょっと不機嫌そうに雄一の頬をペシペシ叩く。


 ミュウがやっている事を見て、楽しそうに見えたのかアリアまで真似しだして、雄一は両方からペシペシと叩かれながら、玄関先まで2人をエスコートした。



 2人をエスコートして台所に戻った雄一は、シチューの入った鍋を見る。


「明日の朝の分ぐらいまで残るかと思ったが、意外に減ってるな……」


 それでも、今日の夜の分には充分だと判断した雄一は、お湯を沸かす為に違う鍋に水を張り、竈にかけると火をくべる。


 お湯が沸くとマカロニを投入して、茹であがるのを待つ傍ら隣の竈で、シチューを温め直し始める。


 この時に、勝手口の外に作った石窯にも生活魔法の火をくべる事で温め出す。


 茹で上がったマカロニをザルで湯切りして、深皿に敷くように入れていく。


 温まったシチューをマカロニにかけて、その上から多めのチーズを被せるようにかけていく。


 手早く、パセリを微塵切りにすると、パラパラとふりかけ、石窯の温度が良さそうだと判断した雄一は、石窯に皿ごと入れる。


 デジタル以外でやるのが初めてな雄一は、石窯に張り付くようにして、焼け具合を確認していく。


 チーズの香ばしい匂いと、綺麗な焼き焦げを確認すると、棒を使って引っ張り出し、木皿に乗せていく。


 すると、チーズの焼ける匂いに誘われた、いつものメンバー+2名が台所を覗き込んでいる。


 シホーヌとアクアとホーラにはグラタンを運ぶように指示をして、残るメンバーには食器や飲み物を運ぶようにと、慣れた指示を飛ばす。


「クッ、なんか、俺がオカンみたいになってる気がする……」


 雄一は、考えたら負けだと自分に言い聞かせた。



 あの無駄に広いと感じていたテーブルだが、ゆとりを持って使ってるせいもあるが、半分以上は使うほど、人数が増えた。


 そして、ホーラが来た時と同じような、やり取りが成されようとしていた。


 そう、いただきます、の教えをしようとした時、キュルルー、キューという2種類の音が響き渡る。


「すぐに済ませるから、もう少し辛抱しろ。シホーヌにアクア」


 なっ! と2人が顔に朱を走らせながら、憤ったように言ってくる。


「主様、私はそこまで食い意地は張っていません!」

「そうなのです! 雄一に名誉を汚されました、弁護士を呼んで欲しいのですぅ!!」

「でも、お前らなんだろ? お腹を鳴らしたの?」


 雄一の言葉に、何かを言いかける2人だったが、再び、お腹が鳴る音が響く。


 レイアが隣にいるシホーヌを見つめ、アクアの隣にいるホーラが見つめる。


 示し合わせたかのように、明後日の方向を見つめる2人。


 呆れた顔をした雄一が、手を叩いて話を進める。


「もう追及はしねぇーから、とりあえず、家の決まり事の1つに、ご飯を食べる時、手を合わせて、『いただきます』と言うのが、あるからアクアとミュウもやるようにな?」


 ミュウの隣に座るアリアが、ミュウに、『いただきます』のやり方を実践で伝える。


 アクアの前で、実践して見せて得意気なシホーヌだが、アクアは隣のホーラに教わっていて見ていない事に気付かず胸を反らす。


 それを見ていた雄一は、突っ込んだら負けと、見なかったことにした。


「じゃ、冷めない内に食べよう」


 みんなで、『いただきます』して食事が開始された。



 余り物のシチューで作ったグラタンだったが、喜んで食べて貰えたようで、ホッとする。


 問題もあった。


 落ち着いて考えたら、予想できたであろうグラタンで舌を火傷するミュウの存在を忘れていた事である。


 慌てて、水を渡しながら食べ方をレクチャーしようする。


 しかし、それをアリアが雄一を止めて、ミュウのグラタンにフォークを入れ、掬って息を吹きかけて自分の口に入れて、モグモグする姿をミュウに見せるという行動に出た。


 アリアのミュウへの優しさにウル、ときた雄一にホーラが、


「あれって、どさくさに紛れてミュウのグラタン奪ったさ?」


 雄一は、驚愕しつつもアリアに視線をやる。


 アリアと雄一の視線がぶつかると、スッと視線を反らすアリア。


 雄一は、アリアに、『頬プニプニの刑』を執行した。


 それ以外、特に問題もなく過ぎ、雄一が洗い物をしていると風呂上りのレイアを見つけて声をかける。


「ミュウはどうだった?」


 お風呂という習慣がなかったミュウに、アリアが一緒に入ろうと連れて行こうとしたが、抵抗に合い、レイアが加勢してお風呂に行っていたのである。


「最初は抵抗されて、大変だったけど、湯船に入ると気持ち良かったらしくて、長湯されて、アタシ達のほうが先にのぼせた……」


 疲れたように溜息を吐くレイアに苦笑しながら、「お疲れ」と言って、コップに牛乳を入れて手渡す。


 受け取ったレイアが、一気飲みするようにゴクゴクと飲む姿を見て微笑む。


「そういや、服は買ってこなかったのか?」


 朝、家を出る時とみんな同じ格好だったので、不思議に思っていたから聞いてみると、


「買ったよ。シホーヌが明日から着よう、て言ってたから明日から着替える」

「そうか、楽しみだな。レイアは何にしたんだ?」


 レイアは頬を少し染めて、


「教えない。アタシはもう寝る」


 プイと顔を反らして、雄一にコップを突き返し、「ごちそうさま!」と言うと自分の部屋へと戻っていった。


 レイアの背中が見えなくなって、雄一はコップを見つめる。


「ごちそうさま、か、少しづつ、距離が縮んで来てるのかな? レイア」


 嬉しそうに微笑む雄一は、洗い物を再開する。





 洗い物が済んで、暖かい気持ちのまま、お風呂に入り、身も心も温まり、部屋に戻ると来客があり頭を抱える。


 ベットの上で気持ち良さそうに寝るアリアとミュウである。


「さて、どうやって寝るかな……?」


 本日、最後の難関と戦う雄一であった。

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