食糧事情の問題

セルデシアにおける食糧事情についてだが、これについてはかなり豊富である。

これはゲームの仕様上、料理人のレベルを早くあげられるように村々でランクの低い食糧アイテムを大量に生産している為であり、ぶっちゃければモンスターから落とす肉なども考えれば食糧アイテムは『多すぎる』の領域に入る。


マイハマの都

「今までは作りすぎての値下がりを避けるために生産を控えておりましたが、消費量が増えたことで生産量もまた増やしております。」

「ふむ………。」


報告を受けながらセルジアット卿は相槌を打つ。

【穀物】【魚】【肉類】などなどといった基本的な生産物を作れるのはサブ職業『農家』『漁師』『畜産農家』などと言った特殊な生産職だ。

これらの生産職は冒険者はなる事が出来ずに、大地人専用のサブ職業として設定されている。

これらはRMT対策の一環であり、また単調な仕事を長時間やらせないようにするアタルヴァ社の考えである。

「それに伴う問題につきましても、これだけの問題がありますが、いずれも現在の技術で解決できることです。」

リストを提出しながらその男は報告を続ける。


「これにより、単純な資産だけを考えたのならば、大幅な増益と言えるのですが………。」

「何か問題でも?」

「はい、今の所問題とはなっていないのですが、我がマイハマの倉庫にある金貨の量が半分になっているのです。」

「何だとッ! 一体何故そのような事になっておるのだ?」

「それが冒険者がアキバに金貨を集めているようでして………。金貨で取引しているうちにこうなってしまったとしか言いようがありません。」

「……金貨以外の資産は増えているのだな。」

「はい、それはもう。」


これは土地の維持費の為に金貨をかき集めているからであり、同様の事はウェストランデでも起きていた。

全ての物の価値が上がっていく中、金貨の価値はとんでもない勢いで上昇を開始していた。

何せこれだけは他のアイテムで代用できないのだ(しかも消耗品)。土地を買う事は金貨でしかできない以上、世界中に存在する金貨の量はすさまじい勢いで減少していった。


アキバ・ギルドホール

「…………先祖は一体何を考えているのだ……。」

菫星は祖先の言葉に頭を抱えた。

『もしもヤマトの金貨が減ったのならば、黄金の川に冒険者を案内しなさい。』

この祖先は何を考えているんだと菫星は頭を抱える。

「………何故に冒険者に我々の秘密を明かさなければいけないのだ………。」

この祖先はとんでもないアホなのか、それとも長く続く歴史の中で変な風に変わってしまったのか。

菫星はやや頭を抱えながらこの事実を考えていた。

(これについてはアタルヴァ社の野望の方で解説する)


「それはともかくとして、金貨の減少はアキバ円卓会議とも話をしているのですが、治安維持の為に必要と判断しております。」

「………この事は大災害以降の混乱を考えれば仕方がないと考えております。」

「ふむ。」


報告を聞きながらセルジアット卿は報告所を見る。


さて、ゴブリンの砦……彼らは今の今まで受けたことのない感情にとらわれていた。

その感情の名前は『飢え』。彼らは自分で食糧系のアイテムを作る事が出来なかったのだ。


ゲーム時代、アタルヴァ社は彼らに強大な敵の設定の為にゴブリンなどの設定を行った。

この時、ついうっかり料理スキルなどを付与する事を忘れていたのである。


強大な敵としての役割を与える以上、料理スキルなどの設定がなされずにそのまま誰も指摘せずにそのまま<大災害>が起きてしまったのだ。


つまり、ゴブリン達は農業ができない。農業ができないから食糧を得る為には狩りをするしかない。

狩りをするためには多くのメンバーが必要であり、そのための食糧がさらに必要になる。

冒険者達がゴブリン退治を断った為、砦内にはゴブリンがあふれ出た。

膨れ上がった勢力はさらに砦の食糧を食らいつくした。

悪循環に悪循環が重なり、食糧が尽きてきてもゴブリンの数は一向に減らなかった。


この時、ゴブリン王は一つの政策を実行した。

即ち、捨て駒に近い南下政策。

一部の兵士達を捨て駒にして精鋭を砦に残す政策。


凶悪なモンスターと設定されることでゴブリン達はすさまじい戦闘力を得た。

しかし、彼らが農業をする機会は永遠に失われた。


それが幸せな事だったかはさっぱりわからない。

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