誰かの願いが叶う頃

 つい先日、母から腹違いの姉が居る事を知らされた。

 かと言って別段不都合はなく、金持ちの家なら遺産相続だとか何やで揉めたりするのかも知れないが、残念な事に私の家は至って普通の家庭だった。

 端的に言えば、父の前妻が浮気の挙げ句蒸発。父は母と出会い離婚を決意し母と結婚。今に至るのである。

 私達一家は何も変わらない。良い母、良い父、少しお調子者の兄、怒ると恐ろしい祖母。幸せだ。

 私達は、幸せだ。

 ではあの人は如何なのだろう。

 二親の居ない前妻方の祖父母に育てられたあの人は幸せだったのだろうか。

 父は如何なのだろう。

 あの人の事を思ったりするのだろうか。別の家庭を築いた自分を悔やんだり謝したりしたのだろうか。

 ふと頭を過ぎる歌がある。私の中では勝手にあの人のテーマソングに定着しつつある歌だ。全体からしたら意味合いが違ってくるのだが、端々が正になのではないかと思う。

 知らずの内に私は優越感にでも浸っているのだろうか。

 一方的に憐れみ、本当ならば今頃父と過ごしているのはあの人なのではないか、奪ってしまったのではないか。

 勝手に憐れまれていると知ったら、私だったら酷く憤慨するだろう。


 時偶あの人の事が頭を過ぎる。侮辱しているのと同じだと解っていながらも、あの歌を思い出しては見知らぬ姉の笑顔を思い描いてみたりするのである。

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