第9話 グリスラ子の秘能
勇者である俺以外でもモンスターを倒したら仲間に出来たりすればいいなあと思って試したけど駄目だったから諦めようとしましたが、グリスラ子もやってみたいと言ったので最後にもう一度だけ試してみることにしました
「面倒なパーティが来たな。フェアリー、マッドゴーレム2体、ブルースライムか……」
「あれくらいどうってことないですわよ。
フェアリーなんて紙装甲ですから。今のタマなら一撃ですわ。
回復が厄介ですから、フェアリーとブルースライムに攻撃を集中させましょう!」
同族をけなしつつ、リーダーであるグリスラ子を差し置いて指示を出すフェアリ子だったが、グリスラ子も特に気を悪くしたような風でもないので放っておいた。
「行くにゃ!」
相変わらず素早いワーキャットのタマが、フェアリーに先制攻撃を仕掛ける。
「打ち漏らしたのにゃ!」
だが、フェアリ子の目論見どおり、一撃必殺というところまでは行かなかったようだ。
ワンピースドレス風の着衣がはだけ、胸部は露わになっているが、下半身を覆うスカートはまだ健在。どういう理屈かわからないが、ワンピースの癖にスカートだけが腰にまとわりついて残っていた。
「ならば、わたくしがとどめを刺しますわ! って、後衛だから攻撃できませんわね! 待機します」
そうこうしているうちに、フェアリーが回復魔法を使えばいいのにタマに攻撃を仕掛けて躱される。
「当たらなければどうってことないニャ!」
まあ、当たっても致命傷には程遠いのだろうが。
「セラセラ~!!」
運悪く、次の行動権はブルースライムのようだった。フェアリーに回復魔法をかけられてしまう。
「とりあえず、フェアリーに攻撃するぷる!」
グリスラ子が、フェアリーに体当たりをかます。
一旦復活したフェアリーのワンピースがまた二段階はだけた状態に。
「ウガー!!」
泥子が追い打ちをかけてフェアリーが沈む。
敵のマッドゴーレム二体の攻撃をタマが難なく躱し、1ターン目が終了となった。
「これでブルースライムを倒せばあとはもう単純作業ですわね!」
それ以前に別に緊迫する戦闘でもなんでもない安心して見ていられる戦いなのだがな。
とにかく、2ターン目。
タマがブルースライムに攻撃をしかけ、見事にヒット。
ブルースライムは体操着が完全に敗れ去り、青いブルマー姿になった。
「わたくしは応援いたしますわ!」
「とどめプル!!」
「セラ~!!」
後方でふよふよと浮遊する(味方が傷つかない限り役立たずの)フェアリ子を
「あと二体ですわね! 泥子!」
「ウガー!!」
泥子の攻撃がマッドゴーレムにヒット。
マッドゴーレムのうち一体はタマにターゲットを絞ってやはり躱される。
もう一体はグリスラ子に。
「ウガー!!」
「きゃ!!」
グリスラ子は躱しきれず、さすがにダメージを受けたが、まだまだ余力は残っている。
「マッドゴーレム仕留めるにゃん!!」
タマがダメージを負っているほうのマッドゴーレム(という名の全身に泥を塗った幼女に見えがちな18歳以上)に攻撃をヒットさせる。
マッドゴーレムの泥が両胸の中央部と股間以外剥ぎ取られた格好だ。
「さすがに硬いにゃん!!」
仕留めきれないが、グリスラ子と泥子の攻撃でマッドゴーレムも残り一体になった。
「やはり余裕でしたわね」
あとはマッドゴーレムの攻撃をタマが躱しつつ、フェアリ子を除く全員で攻撃を集中させ、戦闘が終了する。
「さて、お手並み拝見ですわね。
グリスラ子が、倒したモンスターを従えさせることができるのかどうか。
どうせ無理でしょうけど。ほほほっ」
「えっとぉ、仲間になってくれるぷるって」
「なんですとぉ!!」
フェアリ子が驚愕するが、どうやらそうらしい。
俺には、『仲間になりたそうに見ている』的なメッセージは見えないがどうもそういうことらしい。
グリスラ子は、モンスター達に名前を付けていく。
「えっと、フェアリーちゃんは、羽が可愛いから、
マッドゴーレムの二人は、そっちが
ブルースライムちゃんは、セラセラ言うから
よろしくプルね」
「ちょっと! このわたしくがフェアリ子なんて適当な名前に甘んじてますのに。
『さわ』とかどういうことですの。
そちらのほうがヒロインぽいじゃありませんか」
フェアリ子が文句を言い、俺も、
「そうだぞ、グリスラ子。どうせこいつらは捨石だ。
いちいち名前なんて付けていたら思い入れが出来て使い捨てしにくくなる」
「それはわかってるプル。でもせっかく仲間になってくれたんだし、ちゃんとした名前を付けてあげたいプル」
「時間の無駄ですわ」
「他にも名前はいっぱい考えてるから時間はとらせないぷる。
お兄ちゃん、だめぷるかなあ?」
「まあ、時間がかからないんだったらいいだろう。
あと、今回は仲間にしたが、合成素材にすることも出来そうか?」
「えっと、多分自分のパーティに居る仲間に対してだったらできそうプル。
もちろん、わたしも自分でレベル上げることもできるプルけど……」
なにやらいいにくそうにしているグリスラ子に、続きを目で促す。
「合成強化はできなくなっちゃったプル」
「どういうことだ?」
「わたしもレベルアップには経験値玉で経験値を溜める必要があるみたいプル。
お兄ちゃんと一緒プル」
「まあ! なんて生意気な!!」
八つ当たりに近い怒りをぶつけるフェアリ子だが一旦無視する。
今後の作戦を考えて効率よくモンスター集めと、必要最低限のレベルアップが急務なのだ。
もう時刻は深夜に近い。
だが、俺一人で仲間を増やすよりグリスラ子パーティも同じ作業ができるなら効率は二倍。
予定より多くのお花回収部隊が結成できることだろう。
「じゃあ、パーティを見直ししようか。
リーダーはグリスラ子しかできないから、回復役に、そのまま……」
「瀬良(セラ)ちゃんプル」
「その
「わかったにゃん」
「ウガー!!」
「瀬良(セラ)は適当に倒したモンスターと合成させてレベルアップもしてくれ。
そうだな。頼りになる壁役も必要だから泥子も同じく」
「タマちゃんはいいプルか?」
「ああ、次のエリアでも今の俺達のレベルであればまだ余裕があるだろう。
今は回収部隊の強化を最優先だ。
ってことで、新しく入ったフェアリー……」
「
「紗羽は、俺のパーティでレベルを上げることにしようか」
「どうしてあなたのパーティにわたくしが入らねばならないのでしょう?」
「お兄様になんて口の利きようなのです!? 新入りの癖に生意気ですわよ」
「新入りだろうが、古参だろうが従えないものは従えませんわ!」
フェアリー同士が言い争っている。
「えっと、どういうことなんだろう?」
俺はグリスラ子に助けを求めるべく視線を投げた。
が、答えたのは
「わたくしは、グリスラ子お姉さまのしもべとなるべく契約は致しました。
例えパーティのメンバーに選ばれなかったとしても、一緒に行動するのが筋というものでしょう。
どこの馬の骨ともわからぬ殿方にほいほいついていくような軽い女ではないですから」
「お兄ちゃんは、悪い人じゃないぷるよ」
「百歩譲って、悪い人ではないとしても、わたくしはお姉さまと共に歩む以外の人生を選択する気はございません」
「きぃぃ!! 生意気な口を!!」
フェアリ子は激昂しているが。
そういう仕組みならば仕方がない。一応確認のために、
「お前らも似たような考えか?」
と、先ほどグリスラ子の軍門に下ったマッドゴーレム2体とブルースライムにも聞いてみる。
「当たり前のじゃセラ。
「ウガー!!」
「ウガー!!」
マッドゴーレムの意思は伝わってこないが、どうやらそうみたいである。
「しょうがない。それでも、グリスラ子の命令を聞くんであれば問題はないな。
じゃあ、グリスラ子。適当にパーティを入れ替えながら、仲間集めと、集めた仲間のレベルアップは任せた。
大体一時間ごとぐらいにここで進捗を確かめることにしようか」
「わかったプル! 頑張るプル!!」
とりあえず目的達成のために必要最小限の取り決めだけをして俺はグリスラ子たちと別れた。
疑問は多い。
どうしてグリスラ子だけが俺と同じような力を持つにいたったのか。に始まり、そこから派生する様々なこと。
仮に俺とグリスラ子が別行動を取るようになればどうなるのか。
グリスラ子を素材にするなり経験値玉にするなりして彼女が失われてしまえばグリスラ子の仲間はどうなってしまうのか?
まあ、考えていても仕方がない。今は明日の花採取に向けて俺も仲間集めをしなければならない。
「うちのパーティは、ラミ子、ブルセラ子4、フェアリ子と現状はバランスが悪いといえば悪いが、さっさとマッドゴーレムを捕まえて、壁役にするからな。
仲間集めとブルセラ子4のレベルアップを頑張るぞ」
「ええ、グリスラ子達には負けていられません」
「レベルを上げられるのは嬉しいのじゃセラが、わっちはどうしても捜索隊として命を賭ける定めなのじゃセラね……」
「沢山血ぃ吸うラミ!!」
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