第2話 モンスター集め

 幼女とピクニック




「これはこれは、お気遣いいただいて」


 ネルルの提げたバスケットの中身を聞いてフェアリ子がかしずく。


 親父さんがお弁当を人数分作って来てくれたらしい。しかもフェアリ子の分もちゃんと専用の小箱にフェアリ子サイズのお弁当を作って来てくれたらしいのだ。


「いっつも魚をほぐした時にでた身の切れ端やパンくずなんかを与えられてたわたくしにそんなお心づかいを……」


 と涙ながらに感謝感激してなさる。

 別にパンくずは食べさせた記憶はない。

 たまたま皿の周りに散らかったパンくずをフェアリ子自身が「これくらいがちょうどわたくしには良いサイズですわ」と好んでつまんで食べていたのであるのだから。

 魚に関しては確かにタマがほぐした魚の身の端っこのフォークなんかじゃ食べられない小さな破片を食べさせられていたから気の毒っちゃあ気の毒だが。


「お昼は楽しみぷるけど、まずはお花を探さないとぷるね」


「ああ、ついでにマッドゴーレムとラミアが仲間にできるといいな」


 と、一石二鳥を目論みつつ俺達は街を出ることにした。


 最低ノルマとして、マッドゴーレム一体とラミア一体。運よく遭遇すればブルースライムを仲間にするのが俺の目標。

 かなり緩い目標なので、そのついでにネルルの花さがしを行う予定である。


「念のために一人はネルルの護衛についていたほうがいいかもな」


 と俺が提案した。


「グリスラ子、頼めるか?」


「いいぷるけど、じゃあわたしは戦闘に加わらなくてもいいぷるか?」


「ああ、俺とタマとフェアリ子で充分だろう。それにラミアなりマッドゴーレムなりが仲間になればメンバー数的には事足りるからな」


 決して、グリスラ子を戦力外にしての布陣ではない。

 そもそも、これまでゲームとして、ゲームの亜世界として過ごしてきたこの世界。


 パーティが俺達だけ、つまりはモンスターで占められている時は気にすることも無かったが。


 普通に考えて、普通にこの世界の住人はモンスターに襲われたりする。(のだろう。そのはずだ)


 ゲームであれば、モンスターを討伐するのは勇者の俺ひとりの役目で、他の住人はただそれを見守るだけ……というありがちな世界観――あるいはプレイヤーの目の届かないところで戦いなどが繰り広げられていたのであろう――だと思っていたのだが、ネルルの話を聞くにそうでもないようなのである。


 そもそもサラサさんにしてからが自分でピンクスライム程度なら倒せると言っていたこともある。


 となれば。

 ネルルがモンスターに襲われるという可能性も考慮に入れなければならないだろう。


 その時に、全員が俺のパーティに入っていれば、ネルルをとっさに守ることができなくなる。


 なのでグリスラ子を遊撃要員としてネルルの護衛に任命した。

 フェアリ子じゃあいろいろと無理だから除外なのだが、代わりにタマでもよかったのだが、なんとなくグリスラ子のほうがネルルと相性がよさそうだし、万一の備えだからそこまでシビアに考えることもないだろうとの配置である。




 と、そうこうしているうちに、マッドゴーレムが2体現れた。


「まずは、最初のノルマ達成ですわね」


「倒してもないうちに……」


 とはいえ、マッドゴーレムごときに苦戦する俺達ではない。


 まずはタマが先制攻撃。

 つづけて、俺が攻撃。

 フェアリ子は待機。


 マッドゴーレムからの攻撃をタマが立て続けにひらりと躱したところでターンが終了。

 似たような流れで、数ターンで相手を沈黙させた。


「勇者のお兄ちゃん強いねぇ」


「それは、この世界を救うお人ですからね。

 こんなところで苦戦しているようじゃ話になりませんわ」


「タマも頑張ったにゃ」


「そうだな」


 と、適当に声をかけつつ、マッドゴーレムを一体仲間にした。


「じゃあ、泥子57をメンバーに加えて、パーティを再編成だな。

 とはいえ、俺とタマも前衛のままで」


「あら、泥子を壁にしないのですか?」


「ああ、こいつは牧場に連れて帰るやつだから。

 弱ってきたら回復してやってくれ」


「わかりましたわ」


 と、新たな仲間を加え――泥子58は経験値玉にした――周囲を散策する。


 この辺りはマッドゴーレムの頻出地帯で、ブルースライムやラミアの出現はあまり期待できないために、どちらかというとネルルの花さがしが目的だ。


「オレンジ色の小さな花……でしたわね」


「うん。それがいっぱい咲いてるのぉ」


「見当たらないにゃ」


「この辺りじゃないのかもな。

 フェアリ子もタマも匂いでわかったりしないのか?」


「ですからわたくしは妖精ですってば。

 そんな能力はございませんわ」


「知ってる匂いで近くまで来たらわかるにゃけど」


「それもそうだな。

 ちょっと場所を移すか。ラミアも仲間に加えたいしな。

 それでいいか? ネルル」


「お兄ちゃんにお任せするぅ」


「わかった。じゃあ、ラミアが出る辺りに移動しよう。

 少し戻ることになるが」


 と、移動しつつモンスターを狩る。

 運よく、ラミア2体とブルースライムにすぐに出くわした。


 なんなく仕留めて、ラミア一体以外は仲間に加えた。


 といっても、パーティメンバーではないので、グリスラ子と一緒に、ネルルと歩いているだけである。


「それは大変だったのじゃセラー」


「ラミね」


「でももう慣れちゃったからぁ」


 ブルースライムのブルセラ子3は、俺が相手にする分には面倒な奴だが、ラミ子と一緒になってネルルの話を聞いてやっている。

 グリスラ子が話に加われないくらい3人(リアル幼女一人と偽幼女二匹)は馴染んでいるようである。


「そういえば、お前らこの辺りにずっと住んでたんだろ?

 ネルルが探している花をみたことないか?」


 俺は、新たに仲間になった泥子57とラミ子とブルセラ子3に聞いた。


「ウガー!!」


「知らないラミね」


「もしかしたら……、あれのことのじゃセラか?」


 ブルセラ子3が知っているようである。

 さっさと聞いておけばよかった案件だ。まあ気付かずに時間を浪費しきるよりはだいぶと時間を短縮できそうだ。





 

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