第4話 裁縫グリスラ子
グリスラ子とコボル子とフェアリ子で街に向ってます
道中、ブルースライム、フェアリー、たまに出てくるマミー、新規出現のワーウルフなどを狩りながら街を目指して進むことにした。
ゲームと違って、パーティに入れなければ仲間のモンスターは何匹でも増やすことができるのだが、よくよく考えると
そもそも
ただ、フェアリーやブルースライムはフェアリ子のMP温存のために一度仲間に入れて回復魔法を唱えさせて即素材や合成素材にするというのを繰り返した。そのために、3回ほどしか回復魔法を使えないフェアリ子もMP切れを起こすことなく戦闘を繰り返すことができた。
ちなみにMPはレベルアップ時に全回復するので、フェアリ子がMPを切らさなかったのはMPが無くなる頃合いでレベルが上がったという理由も関係している。
俺のレベルは4になり、
体力:16(14→16)
魔力:11
筋力:8
敏捷:15(11→15)
知力:10(8→10)
精神:10(7→10)
器用さ:9
というステータスになった。
グリスラ子やコボル子にもちょくちょくとモンスターを合成してやったのでそれぞれレベルが上がり、レベル5になった。
フェアリ子もレベル4で早くもグリスラ子とコボル子に追いつきつつある。これは、同族合成で効率よく経験値が稼げたのと、そもそもフェアリーはレアリティ1なので合成経験値もそこそこ得られるというのが理由だ。
そんなわけで街に到着する。
「わ~、これが人間の住んでいる街なのね!
すごい人がいっぱい!」
相変わらず、ありふれた台詞をありふれた表情、口調で大げさに口にするフェアリ子である。
「そういえば、グリスラ子もコボル子も村に着いた時には別に驚きもしなかったが、感動とかはなかったのか?」
「なんとなく様子は知ってたプルから」
「それに、やっぱり村と街を比べると全然活気が違うコボ。
この街の大きさとか見ると少しはすごいと思わないこともないコボ」
「そういうもんか。ということはフェアリ子はやはり、大げさに振る舞っているのだろうな」
「そうとも言い切れないぷるよ。わたしだって、ちょっとわくわく……」
「ねえ、兄様! お買いものに連れってってくださいましな。
わたし、アクセサリーとかお洋服とかそういうものをお兄様に選んでもらうのが夢でしたの!」
「いや、アクセサリーはともかく、お前らモンスターだから服に見えてそれは体の一部だろうよ。
何を着ても見栄えはかわらないんじゃないのか?」
そうなのである。容量や製作費の問題からゲームではモンスターは装備とかを変えられるものの、グラフィックはいつもの服装で固定だったはずだ。
そもそも、グリスラ子なんかは全裸に粘液を纏わせているだけで、これに服を着たら、粘液が上か服が上かでややこしいことになりそうだ。
「あら、失礼な。ちゃんとお着替えはできましてよ。
わたしは回避特化の後方担当だから、防御力重視の防具なんていりませんし。
おしゃれなお洋服が欲しいのです。戦闘には支障をきたしませんから」
「といわれてもなあ……」
「あまりいいたくないコボが、あっしやグリスラ子先輩の服はともかく、フェアリ子のサイズに合うような服が売られているとは思えないコボ」
「な……、ガーン……」
頭を抱えてフェアリ子が頭から地面に急降下していく。よほどショックだったようだ。このままじゃあ、地面で頭を打って無駄なダメージを食らうことになるのじゃなかろうか?
などと思ってたら地面に激突する寸前に体勢を立て直して、また俺の頭の辺りまでふよふよと浮かび上がってくる。
どこまでが本気の落ち込みでどこまでが演出上の振る舞いなのかさっぱりわからん。
「まあ、服屋はともかく、武器と防具は買いに行くからな。
俺の装備と、フェアリ子のアクセサリーぐらいは買う予算がある。
グリスラ子とコボル子に関しては申し訳ないが……」
「わかってるコボ。あっしら低級モンスターだから装備とかできないコボからね。
あっしはこの拳があれば十分コボから」
「うん、わかってるぷるよ、お兄ちゃん。
その気持ちだけで充分ぷる……」
聞き分けのよい二人に引き換え、
「あ~、おしゃれなお洋服……。
防御力とか属性ダメージ軽減とか性能重視じゃなくって、きらきら可愛らしいアクセサリー……」
とフェアリ子は未練タラタラのようである。
まあ、そういう不協和音は放っておいて、さくっと武器屋と防具屋をまわり俺の装備を刷新した。
フェアリ子のアクセサリーについては、
「こんなダサいのいやだ~」
とかなんとかのたまってデザイン重視だったり無駄に高い高級アクセを欲するので、結局買わないことにした。
ちなみに、防具やアクセサリー類は便利機能によってサイズが装備者にフィットする謎機能を備えているために、フェアリ子にも装備可能だったのだ。本人が回避特化とかいっているので、素早さを上昇させる腕輪を買ってやろうかと思ったのだが大きなお世話だったようなのだ。
本人が要らないと言ってるんだから無理に装備させる気も起きない。
「さてと……」
買い物も終わり、まだ日暮れまでにはまだ少し時間がある。とはいえ、結構疲れたし、フェアリ子のMPも使い果たして街に来たのでこのまままたモンスター狩りに出かけるわけにはいかない。
宿屋に泊ってもファッションホテルみたいに休憩なんてシステムはなく、ちゃんと睡眠をとって朝を待たないと体力とかも回復しないだろう。
宿屋に行くのはもう少ししてからでいい。
手持無沙汰になる。
が、この世界がゲームと同じ構成となっているのであれば。
次の街に進むためにはお使いクエストをクリアしないといけないはずだ。
ゲームの進行イベントは大体頭に入っている。
情報収集も兼ねて、そこら辺の人に話しかけてみるか……。
と、考えていると、
「お兄ちゃん」
「どうしたグリスラ子?」
「あのね、ちょっと、時間とお金に余裕ないぷるか?」
「まあないことはないが、どうした?」
グリスラ子から何かを言いだすことはあまりなく、大抵は自分の事ではなく俺や仲間のためを思っての発言であることが多いため話を聞いてやる。
「服屋さんに行ってみたいぷる……」
「別にいいが、どうした? その格好で歩くのは恥ずかしいのか?」
「違うぷる。ちょっとフェアリ子ちゃんが可哀そうだから」
「でも、フェアリ子のサイズの服は売ってないコボよ。
それにあっしらの服だって、子供用とかしか着れないコボから、あんまり種類がないと思うコボ」
「欲しいのなら服ぐらいは買ってやらないでもないが……」
「服屋さんに行くのは好きなデザインを探すためぷる。
そのあと、生地と裁縫道具を買って欲しいぷる」
「グリスラ子先輩裁縫できるのコボか?」
「うん、そんなに上手じゃないけど……」
何を言い出すかと思えばそんなことだった。
とはいえ。
グリーンスライムとして生まれ、グリーンスライムとして育ち、グリーンスライムとして歩き、
グリーンスライムとして感じ、グリーンスライムとして選び……。永遠にともに。
そんなグリスラ子がどうして裁縫スキルを持っているのか? という疑問は生じたが。
特に急ぐ旅でもない。
「わかった、じゃあまずは洋服屋に行ってみるか」
「グリスラ子さんが……、わたしのお洋服を……?
作ってくださる?」
微妙な表情を浮かべるフェアリ子を放置して(またなにか言い出すと面倒だから)、
「じゃあ行くぞ、グリスラ子、コボル子」
と、俺は服屋を探しに歩き始めた。
街はゲームと同じような地理になっていて武器屋や防具屋の位置はわかったが、もちろんゲームでのシンプルなMAPとは違って広く、建物も多いので服屋がどこに何軒あるのかわからない。
それでも誰かに聞くか、栄えてそうなところに行ってみればわかるだろうという見込みだ。
「あっ、ちょ、三人とも置いてかないで!」
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