43. 真弦が起きないか心配になる







 真弦は真澄の絵本朗読の声を聞きながら眠りに落ちる。

 子供を彼に託す不安は付きまとうものの、責任を果たす意思を見せた真澄の真摯な眼差しに納得したのだろう。

 くーすーと無防備な寝顔を晒していた。


 真澄は真弦の服とカツラを脱ぎ捨ててミリアに渡した。


「久々に女を演じてはいるが、こう連日だと疲労が溜まる……」


 真っ黒な男性用パジャマに袖を通してほっと溜息をつく。

 交換生活はこの二人用の部屋で一時的に元に戻る事が出来るのだ。ああ、真弦の妊娠に巻き込まれた真澄が一番の被害者だろうなぁ……。


 コンコン


 しばらく間があってドアが勝手に開いた。


「真澄、こんな時間に何か用かよ?」


 格闘技の趣味全開の派手なパジャマを着ていた龍之介がこっそり入ってきた。いつもオールバックにしていた髪の毛は下して、髭が無くて幼い顔が余計幼く見える。……え? あの髭面はガキに見られないように配慮した付け髭だったのかよ!?


「しばらくご無沙汰しているなと思ってな……」


 ナイトテーブルに置いていたワインを龍之介に傾けて口元に笑みを浮かべる。


「ああ、酒か。喜んで付き合おう」


 嬉しそうにした龍之介が真澄のベッドの隣に座って空いたグラスを手に取る。

 龍之介は真澄の夫としてではなく、友人と接するようにワインで乾杯した。


「……真弦を起こさないように静かにしないとな」


 龍之介が酒を煽る真澄の隣で罪悪感を抱きながら真弦に振り返った。


 日々があまりにも平和過ぎて、うつらうつらと虚ろになっていた意識を取り戻した吾輩は、真弦のベッドの下の籠の中で見てはいけないような光景を見てしまった。


 ワイン一杯で顔を真っ赤にした龍之介がパジャマのズボンを脱がされて程よく酔った真澄の膝の上に座ってモノをしごかれている……!


「……ヤバイって……真弦が起き……あっ!」


 真弦が龍之介の押し殺したような低い喘ぎ声を聞いて静かに寝返りを打つ。

 その寝顔は安らかで幸せそうだ。


「ほうら、声出したらいけないって言ってるじゃないか」


 真澄はドSの表情をにっこりと浮かべながら、膝に乗せた龍之介のパジャマの前を肌蹴させて空いている方の手で小さな乳首を指でこねくり始める。


「……うううっ! 真澄……駄目……」


 龍之介は乳首も感じる男みたいだ。目頭に涙を溜めながら下半身露出と乳首刺激の羞恥に耐えている。

 お前らナニやってんですか? 小さい獣の吾輩がこいつらの痴態が見える方向に移動して毛繕いしても気が付かないなんてさ。

 否、むしろ獣に見せつけて楽しんでいるとでもいうのだろうか。


「龍之介、こっちだ」


 真澄は龍之介の乳首刺激をやめて首を掴み、強引に唇を塞ぐ。


「ふ……うぅぅん!」


 龍之介が苦しそうに足をばたつかせる。

 ああ、もう限界って事だよな。だが、堪えようと必死で真澄と唇を合わせてベロベロとチューしてるのがわかる。

 そんな時、意地悪な真澄が唇を放してまた乳首を刺激し始めた。


「あーっあーっっ……でるぅ……」


 龍之介がだらしない表情を浮かべながら、虚空に粘性のある白い液体を床に撒き散らした。

 おわっ、危ねえ、避けないと吾輩も絨毯の巻き添え食らうところだった。


 龍之介が射精の後の気怠さで息を切らしながら真澄にもたれ掛っていると、真澄は龍之介をベッドの中央に寝かせた。


「……真澄、人前でこんな事するなんて鬼かよ?」


 目尻から涙を零した龍之介はとても20代の男には見えない程幼くてかわいらしい容姿をしている。射精後のチンコはそんなに大きくはない。


「龍之介が変態プレイで興奮するものだから、ほら、僕のここも反応してしまったじゃないか」


 真澄は下から押し上げるパジャマのズボンの布をひと撫でする。あの布の押し上げ方、龍之介と比べて結構チンコが大きいんじゃないのかな……?

 あれれ? 真澄って元女の人じゃなかった?


「この変態。ド変態は真澄の方だろ」


 やっぱり従姉の真澄も真弦と性質は似ていたようで、変態じみたプレイは大好物みたいだ。

 ただ、真澄は真弦と違いドSが前面に出ていた。


「やめっ……馬鹿、そんな物で……っ!」


 龍之介が後ろ手にされて彼のパジャマの袖で手を縛られている。


「ミリア、パジャマでは足りないから龍之介の脚を固定できそうな紐を持ってきてくれたまえ」


「御意にございますわ」


 そういえば、この情事って吾輩以外にもロボットのミリアも見てたっけ……。とことん異常だよなこいつらも……。


 あっという間に全裸の龍之介はM字開脚にされて腕と一緒に紐で縛られ、萎えてだらりと垂れさがった股間の大事な物を隠す事も出来ないでいる。

 可哀想だが、ミリアも吾輩も止めてやる事はご法度なのだ。


「わーっ! やめろ真澄ーっ!」


 縛られた龍之介の抵抗手段は最早、口しか残されていない。


「龍之介、そんなに騒いでは真弦が起きてしまうぞ」


 真澄がパジャマの下を脱いで出したモノは、『巨砲』とも呼べる立派なチンコだ。……え? 女なのにチンコ生えてる……? 人間の世界ではチンコも外科手術で何とかなるって言うしな……どうにかしたんだろうよ。猫にはそこん所よく分かんないが。

 吾輩は混乱しながら実況をしなければならないのか? 解説のミリアは人払いの為に既に部屋の外に出て行ってしまっている。


 真澄の怒張したチンコの大きさは女の腕程もあり、とても並みの女でも上下の口で銜え込む事は難しいであろう。


「ふぐぉ……っ」


 そんなモノを口に突っ込まれた龍之介はいよいよ黙り込んだ。

 グキンと音がして龍之介の顔は顔面蒼白になった。顎が外れそうになっている。


「龍之介、学習して歯は立てないでくれているのは嬉しいが、そんなに締まりがなくては僕も楽しくないな」


 童顔の龍之介の口を使って鋳鉄を繰り返す真澄は不機嫌そうに彼の頭を小突いた。口を使われた方の龍之介は怯えた表情で涙を流している。


「まあ、真弦の前では激しいプレイは控えようか。龍之介は声がうるさいからな」


「…………(コクコク)」


 龍之介は強制的に黙らされたまま頷く。

 しかしこの男、怯えている割には残念そうに見えるのはやっぱりドMって事で間違いないようだな。


 両手両足を縛られたままの龍之介は、いつの間にか真澄の膝の上に戻っていた。

 だが、今回は迎え合わせで抱き着かせられて揺さぶられている。


「……う……あん……あん……っ!」


 真澄よりも背が低い男が上下に突き上げられて低い呻きを漏らしている。

 龍之介の尻穴に真澄のぶっといチンコが突き刺さっているのが猫目線でははっきりと見えた。尻の穴も拡張次第でそんなに広がるのか……。

 え? え? それよりもさ、お前ら雄(?)同士でしょ……?


「龍之介、気持ちいいか?」


 龍之介を抱いている真澄は気持ちよさそうで、満足の行った百獣の王のような表情を浮かべて性技の刺激を受けている。


「うっ……うっ……前立腺……気持ちいい……はっ!」


 そんな時、真澄に抱かれている龍之介が目にしたのは、寝ぼけた顔で半身を起こした真弦の姿だった。


「どうした? 見られてるのか?」


 真澄は真弦に見られても龍之介を上から突き上げる事をやめない。


「あっあっ……やめっ……こんなのいけない……」


 龍之介が顔を真っ赤にして艶やかな表情をしながら真澄のつむじに顔を伏せる。


「ヤンボーマーボー新婚りょこぉー……」


 真弦は気持ち悪い笑みをニタニタ浮かべると、何故か異常事態に気が付かずにまたすやすやと眠りについた。さっきよりも心なしか幸せそうな寝顔である。


「うわああ……びっくりしたぁ……!」


 龍之介が顔面蒼白なままでほっとしてる中、


「……締まりが急にきつくなって……龍之介、君は……!」


 真澄が龍之介の体内で果てたのだった。







 真弦が男同士の情事に気が付かないまま、目が覚めたのは午前8時だった。


「昨晩はよくお眠りでしたわね」


「うん、いい夢を久々に見たよ」


 窓を開けて爽やかな風を入れるミリアと真弦が和やかに会話をしている。

 おいおい、ミリア、真弦に昨晩目の前で何があったとか教えないつもりかよ……?


「まあ、それはどんな夢でしたの?」


「真澄が龍之介をガン掘りしてた。余は満足じゃ~」


 わーっ! あの時しっかり見てたんじゃねえかよ……。

 しかも真弦は、「あれが本物だったら良かったのに」等と呟いているので、完全に夢だと思い込んでいる。

 隣のベッドで寝ていた真澄は既に起床してどこかに行ってて良かったな!


「真弦様は本当にボーイズラブがお好きでいらっしゃいますわね」


 ミリアはニコニコ顔に顔を作り変えて機械的に微笑んでいた。さすが、超高性能AIは違うな。スルースキルも神の様だ。


「今日は真琴様がいらっしゃる日ですわよ。光矢様にも気兼ねなくお会いできますわね」

「ああ、今日は日曜日か」


 この家に軟禁状態の真弦はミリアの一言で曜日を知る事が出来た。

 管理された食事と運動などの生活が息苦しかったが、あと何日、あと何日と出産の日を数えて希望を失う事は無い。


 真弦はミリアから自分用のロングのカツラを渡されるとそれを被った。

 日曜日は自分の部屋から出られないものの、真弦の自分らしさが戻ってくるのは嬉しかった。


 日曜日の真弦は本来の自分に戻る為に部屋の外には出られない。代わりの真澄が少し腹の膨れた妊婦のボディスーツを服の下に着て筋力トレーニング代わりに外に出るのだ。




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