第三章 流涙の仕組み、涙の理由
第1話
【此岸征旅】のユリウスとか言う男ともう一人の男との交戦を経て、その後結局何も情報は得られず、ただ被害者が増えていくだけ。
新たに二人が殺された。
報道によるとその二人は眼球を刳り貫かれていたそうだ。その眼球は行方知らず。どうせ持ち去ったのだ。
ユリウスは死んだから、彼とはまた違う人が殺人を犯しているのだろう。
情報を得られないまま何日も過ぎる。あちこち歩き回って調べるものの【此岸征旅】の構成員に出くわすこともなければ、殺人現場に出くわすこともない。殺人現場を発見した頃には警察がすでに来ていて鑑識を済ませていた。
どうしたものか、と悩んでいたらある少女と出会う。
その少女との出会いを少し語ると……まあ、語るほどのことでもないかもしれないが、少女がチンピラに絡まれているところを俺たちが助けたというありきたりな出会いだった。
照りつける陽射し。昼ぐらいだった。歩道を歩いていた。
少女が数人のチンピラに目を付けられて「可愛いじゃん」「俺たちと遊ぼうぜ」などと声を掛けられ裏路地へ連れて行かれる。俺と橘花はその場面を見るのだけど、俺はまあ別に他人だし放っておけばいいやと思った。橘花はそれに対して「助けてくる」なんて言って、俺は止めようとしたのだけど、俺が止めるよりも速くその少女のもとへ行く。
「おまたせー」と言って橘花は少女を取り囲むチンピラの輪の中へ割って入る。待ち合わせしていた友達、という設定らしい。
「あ、きみも可愛いじゃん」
輪の中に割って入って、それで少女を助けられればよかったけど、結局橘花もチンピラに絡まれる。
「なに、きみたち友達なの? なら、もういっそのことみんなで遊ばない? いい所、知ってるよー」
「あ、それいい。ねえ、遊ぼうよ」
言って、チンピラの一人が橘花の肩に手を回す。橘花の顔がチンピラとチンピラの間からちらりと覗き、彼女の目は俺を見ていてどう考えたって俺に助けを求めている目であった。
ミイラ取りがミイラになって、最終的には俺に助けを乞うか。まったく情けない。できないなら最初からするな。とはいえ、求められては仕方ないので俺は彼女たちをチンピラから助ける。
チンピラに声を掛ければ「あぁ、なんだ?」とこちらにガンを飛ばしてくる。おい、女に接するときと態度違うじゃんとか思いながらも俺は特に前口上を述べることなくそいつを殴り飛ばして無力化し、続いて襲いかかってきたチンピラどもも殴って無力化する。殴って蹴って、殴って蹴って、意識を失ってもとりあえず数回ほど蹴っておいた。
そうして橘花と少女をチンピラから助け出した。
「ありがとうございました」と少女に感謝された。
まあ、こんな感じでその少女と出会い、その少女の名前は
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